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コラム

女性の金融アクセスを広げた”ジェンダーパフォーマンス指標”

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Source: http://www.cgap.org/blog/prove-it-measuring-gender-performance-microfinance

Photo Credit: Supriya Biswas

 

女性の金融アクセスを広げた”ジェンダーパフォーマンス指標”

安倍首相が2013年9月26日の国連総会演説で語った「ウーマノミクス」。ウォール・ストリート・ジャーナルの記事にはこうある。(注1)

“日本の女性という最も活用されていない資源をさらに開発するだけで、日本の国内総生産(GDP)は最大で15%も増加し得る”。

これは1999年、ゴールドマン・サックスのキャシー松井氏とその同僚たちにより発表された「ウーマノミクス」というレポートで最初に主張された 。(注2)

日本社会が抱える、人口減少、少子高齢化、財政赤字などといった問題を解決する施策として、まず「女性」という日本の隠れた資産を最大限に活用することが必要だと提唱した 。(注3)

ウォール・ストリート・ジャーナルでアフリカの事例も取上げられているように、これは日本だけが該当することではない。女性の労働参加率の向上により世界中でどれだけ生活水準を良くできる可能性を秘めているか、もっと発信していくべきではないか。今回は、マイクロファイナンスという観点から、発展途上国において、女性の金融へのアクセス及び女性の労働参加を促進させる為の鍵となるであろう“ジェンダーパフォーマンス”について、Women’s World BankingのCEOであるMary Ellen Iskenderian氏によるCGAPのブログ記事(注4)を通して紹介する。
“Prove it: Measuring Gender Performance in Microfinance”(*和訳・注釈はLIP作成)

女性の起業家たちの金融サービスへのアクセスは、大きな障害に直面している。この弊害は、女性の仕事や家庭、コミュニティとの関わりにおいて負の影響を与えており、それゆえマイクロファイナンス業界は、女性たちがこれらの障害を乗り越える手助けをするというミッションのもと活動してきた。実際、MIX(Microfinance Information eXchange)(注5) のデータ分析により、多くのマイクロファイナンス機関が女性の顧客も対象としている(女性比率74%)と主張し、半数以上のマイクロファイナンス機関が女性のエンパワーメント(注6)、もしくはジェンダーの平等性を目標に掲げていることが分かった。しかし、ジェンダーと金融について更に意義のある議論を進めていくには、ここで主張する金融サービスへの取り組みやエンパワーメントについてもっと力を入れて取り組んでいかなくてはならない。

2011年、Women’s World Banking(以下、WWBと表記)はGender Performance Initiative(以下、GPIと表記)という指標を発表した。GPIは、女性の金融包摂(financial inclusion) (注7)の成果を示す為、マイクロファイナンス機関がどれだけ効果的に女性に金融サービスを提供しているかを評価するものである。そして最終的には女性が顧客や働き手となり、更に社会、及び経済変化を起こすようなビジネス・ケース例を構築していく為の指標だ。

これらを実現する為に、いわゆる“ジェンダーパフォーマンス”をはかる指標を開発。まず初めに、WWBの広範囲かつ定性的研究(extensive qualitative research)(注8)を踏まえた女性の借り手の評価、また彼女たちの生活水準に基づき、優先地域を明確化した。これらの優先地域は、女性たち特有の生活サイクルにおける需要や掲げている目標、またサービスの質や借り手を守ることに焦点を当てるといった、金融商品デザインやその多様性も考慮している。また我々はマイクロファイナンス機関のスタッフやマネジメントにも着目した。女性の借り手たちにとって最もふさわしいサービスを提供する為には、マイクロファイナンス機関そのものが女性役職員にとって最高の働き場所であるべきだからである。そして最後に、マイクロファイナンス機関のファイナンシャルパフォーマンス、女性役職員及びその家族に、彼女たちがどのように貢献し成果をもたらすのか理解を深めようと試みた。

我々のネットワークメンバーである3つの機関、ウガンダのFinance Trust、コロンビアのFundación delamujer、インドのUjjivan Financial Servicesと共に、この指標のフレームワークを試験的に実施。過去2年間、それぞれの機関における借り手のデータベースで広範囲な分析がなされた。また指標を集め、統計し、レポート化する実用性を判断する為、マイクロファイナンス機関のコアメンバーと調査面談を何度か行なった。

Finance Trustでは有効なデータを得られただけでなく、男性、女性の借り手それぞれの違いを示唆する情報を入手することができた。例えば、Finance Trustの女性の借り手のポートフォリオは、大きな商業ローン以外全てのローンサイズで、男性よりリスクが低いことが示された。一般的に女性は男性に比べて信用できる返済者と見なされるが、この仮説を検証するのは批判が多い。だが、各商品・各性別のポートフォリオ分析によって、Finance Trustはリスクを誘発しうる要因を理解することができたのだ。

Fundación delamujerは女性を対象に長年に渡り献身している機関であるが、(商務、リスク及びマーケティング部を含む)機関全般にわたってソーシャルパフォーマンス指標の重要さを再認識することとなった。例えば、農業ローンサービスの取り組みにおいて男性には31%、一方女性にはわずか12%の貸出しであることがGPIの試験的実施で判明した。後に原因を追究したところ、金融サービスのコンテンツが女性たちの需要に合っていなかったことが分かった。そこでFundación delamujerは開発を続け、多数国間投資基金(MIF)、ドイツ政府機関(BMZ)(注9)、Hivos Aid、及びIrish Aidの協力のもと、近年新たに、女性の借り手に焦点を当てた農村地域への金融サービスを全国に展開した。分析により、男女の借り手の定着率の違い(男性62%、女性68%)も明らかになった。これは女性の借り手は男性に比べ、より忠実であるという仮説を支持する根拠である。これらのデータにより、Fundación delamujerのようなマイクロファイナンス機関が、借り手の金融サービスに対する満足度を見極められるようになる。それだけでなく、女性を対象にした金融サービスのビジネス・ケースにも貢献できるのだ。

GPIの試験的実施により、借り手に最善の結果をもたらす為の社会的指標を追究し、分析する可能性を見出すこともできた。例えば、インドのUjjivanでは借り手の子どもたちの年齢、及び教育環境についてのデータを収集。9歳から15歳までの子どもを持つ27%の借り手が少なくとも1人の子どもを学校に通わせていた。これらのデータを長い期間をかけて集め、Ujjivanでは家族の幸福度をはかること、及び教育に関連する金融サービスを作ることが可能となった。

これらの検証結果から、WWBは“ジェンダーパフォーマンス”を調査し、改善していく総合的なツール(注10)を発表した。金融機関がこれらの指標を使い、分析することで、彼らがどれだけ女性により良い金融サービスを提供できているか、彼女たちがどのように金銭的な目標や社会的使命に献身しているかという理解を更に深めていってほしいと願う。

ジェンダーに関するデータは、今後更に現状を変化させる可能性を秘めている。まだ最初の一歩を踏み出したばかりだ。もし金融機関が女性へのサービス提供に本気で取り組むとすれば、それを成し遂げる為のデータを収集し分析し続けなければならない。そうなれば、女性の借り手にとって有意義なアウトリーチ、金融サービスの提供を実現することが可能だ。もっと言えば、所得の低い女性たちが直面する障壁についての理解を深め、金融サービスへのアクセスを更に良くしていくこともできる。“ジェンダーパフォーマンス”は、女性たちの生活の安定性と成功を導く鍵となっているのだ。
GPIにより各マイクロファイナンス機関が借り手のニーズを踏まえたサービスをより効率的に向上させ、マイクロファイナンスを利用したくても利用できなかった女性たちの為にその要因を分析し一つずつ解消していった。結果、彼女たちの金融アクセスは拡大し、彼女たちの家族の生活、所属コミュニティ、村、地域全体へと影響を与えていく。

私たちLIPマイクロファイナンス調査チームでも、貧困削減効果の指標や調査方法について研究し、マイクロファイナンス機関の独自のアセスメント手法を確立することを目指している。これにより、貧困削減に効果的なファンド企画をサポートすることが可能となる。LIPマイクロファイナンスプロジェクトは、「全ての人にチャンスを」という目標を掲げ活動をしているが、社会の不平等を全てなくすことができなくとも、こういった指標やツールの活用はより多くの人々が平等に金融サービスにアクセスできる大きな第一歩となり、貧困をゼロに近づけていけると信じている。

【注釈】

(1)ウォール・ストリート・ジャーナル 2013年9月26日『【寄稿】「ウーマノミクス」の力を解き放つ』

(2)http://www.goldmansachs.com/japan/ideas/demographic-change/womenomics-2011/

(3)The Japan Times for Women Vol.3

(4)CGAP“Prove it: Measuring Gender Performance in Microfinance”

(5)http://www.mixmarket.org/

(6)①力をつけること。また、女性が力をつけ、連帯して行動することによって自分たちの置かれた不利な状況を変えていこうとする考え方。②権限の委譲。(中略)開発援助において被援助国の自立を促進するために行われる。(三省堂「大辞林」)

(7)金融包摂(financial inclusion)とは、「社会の幅広い層に対する金融サービスの提供」を指す。

参照:白川方明「アジアにおける金融:バンキング・ビジネスと資本市場―国際コンファレンス・前夜ディナーレセプション (日本証券業協会主催)における基調講演の邦訳―」

G20ソウル・サミット(2010年11月)の合意を受けて、金融包摂行動計画を具体的に実施する主体である、金融包摂のためのグローバル・パートナーシップ(GPFI)が立ち上げられている(2010年12月)。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/g20/cannes2011/annex06_j.html

(8)http://www.womensworldbanking.org/publications/research/

(9)http://www.bmz.de/en/

(10)http://www.womensworldbanking.org/wp-content/uploads/2013/09/Womens-World-Banking-Gender-Performance-Indicators.pdf 

(米山倫代)