Living in Peace Microfinance Project

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コラム

〜SPMの取り組みで何が変わるか〜

昨年、2014年のマイクロファイナンスフォーラムでは、「収益性とソーシャルインパクトの両立に向けて」というテーマで、マイクロファイナンス機関の継続性(財務的持続性、財務的健全性、サステナビリティなどでも良いと思います。)を保ちつつ、ソーシャル・パフォーマンスを発揮する重要性を議論しました。

顧客のニーズを真に理解しなければ、本当に効果のある金融サービスはいつまで経っても届けられません。ソーシャル・パフォーマンスを評価するツールに、SPM(Social Performance Management)がありますが、SPMの実践によって、実際にどのような効果があるのでしょうか。

そこで今回は、CGAPのレポートの1つを紹介します。このレポートでは、SPMを活用した事例として、ウガンダのVision Fund UgandaとカンボジアのAMKという二つの機関が挙げられています。こうしたマイクロファイナンス機関や金融サービスを提供する団体にとって、ソーシャル・パフォーマンスを高めることは、その顧客、従業員、投資家全ての利害関係者に対してメリットがあると言えそうです。

“Embedding Social Performance Management in Financial Service Delivery” 和訳LIP作成)

“試行と成長を何度も繰り返し、金融サービス提供者 (ファイナンシャルサービスプロバイダー、以下、FSPsと表記)は金融包摂(financial inclusion)を進展させ、低所得層の顧客の為の利点を生み出すということを学んできました。FSPsは必ず顧客第一でなくてはならないのです。金融商品は、貧困層の人々が生活水準を上げられるよう企画されるべきであり、サービス提供は信頼性、透明性のある、公平でかつ安全なものでなければありません。ビジネスの各段階における意思決定は顧客を中心に考え、確実に人々の生活の価値を高めるものであるべきなのです。いくつかのFSPsは顧客中心主義というDNAを生まれながらにして持っていると言えます。彼らの持つシステム、行程、また従業員は、顧客との絆、信頼、長期的関係を築く上で大きな役割を果たします。一方、その他のFSPsにとって、顧客中心というのはチャレンジでもあります。特に、低所得層にサービス提供をするとなると、尚更困難です。

多くのFSPsは、顧客の利点と顧客保護のバランスを取り、財政的持続性をはかる実践的なガイダンスを探し求めています。そこで、ソーシャル・パフォーマンスタスクフォース(以下、SPTFと表記)(注1)のUniversal Standards Implementation Guide(注2)では、戦略、ガバナンス、事業、そして従業員の待遇をどのように改善していくかのガイダンスを提供しています。これはSPMの一連の業界基準に基づくもので、SPTF Universal Standards for SPM( The Universal Standards)(注3)と呼ばれています。

(※SPTFについて、Living in Peaceのコラム、ソーシャル・パフォーマンス評価のフレームワーク (2014/10/13)も合わせてご参照下さい。)

この要綱は、SPMを実証化させ、FSPsがいかに責任のある金融事業を実際のサービス提供に定着させていくか、また業界の健全な発展にどう貢献していけるかという課題にスポットを当てています。

ビジネスにおけるSPMへの考慮

SPMは、全ての戦略、及び業務決定において顧客を中心に考えるという管理方式です。役員、経営管理者、他の従業員全員によって遂行されるべき、明確な社会的戦略を考えるところからSPMは始まります。SPMの優れたFSPsは、顧客がいざという時に危機に対応でき、かつ経済機会に投資し資産を築き、日常生活、またライフサイクルにおける金融的ニーズを管理するのに役立つ金融商品を考案できます。 そういったFSPsは、従業員を大切にし、また金融的な目的と社会的な目的のバランスを保つよう努めています。

SPMはファイナンシャル・パフォーマンスを高める可能性を秘めています。顧客のニーズを理解し顧客に価値をもたらすことを重視しているFSPsは、顧客が必要とする商品を提供しており、そしてそれはマーケットシェアを向上させることにも繋がります。顧客は主に評判や、商品が適しているか、また顧客サービスは良いか等に基づいてFSPsを選定するからです。改善された顧客データによって、より良いマーケットセグメンテーション、顧客の絞り込み、商品販売を行うことができます。顧客や従業員を大切にすることは、忠実な顧客や従業員を持つことに繋がり、その結果、顧客の減少や従業員の離職を防ぐことができるのです。最新のMicrofinance Information eXchange(MIX)データによると、従業員の離職率が高いFSPsはポートフォリオの質が低く(債務不履行が多い)、また顧客の定着率(retention rate)も低いことが明らかになっています。

もちろん、SPMを実行するにはコストもかかります。顧客のニーズに合わせたサービス提供は、生産性にマイナスの影響を与え得る業務やシステムにお金を掛けざるを得ないこともあります。同様に、手の届きにくい、取り残された地域へのサービス提供は、効率性を悪化させるかもしれません。しかし、短期間でこのように改善が見られるのだから、長期間で考えれば、市場における競争力を高めることに繋がり、またより多くの忠実な顧客層の獲得が期待されると考えられます。

例えば、顧客保護という観点でこのシステムを取り入れることは、賢いリスクマネジメント戦略となります。こうした戦略は正当に費用をかけることができ、新しいビジネスを生み出す可能性があります。2013年の研究によると、透明性のある価格設定、クレーム対応、スタッフの倫理的行い、顧客のプライバシーにおいて正しく従事することは、より高い収益率をあげることに繋がるということが分かっています。

FSPへの資金提供者、投資家は、顧客のエピソードや写真以上のものを求めるようになってきています。真の社会的効果をもたらす為、彼らはより一層説明責任をきちんと果たしてもらいたいと考えており、きちんとした社会的データを出すことができる機関を大事にします。更に、多くの規制担当者や政策立案者が金融包摂に関心を持つようになってきている中、顧客保護、社会的報告、場合によっては実際の社会的成果において求められる水準は上がっています。既に積極的な取り組みを行っているFSPsは、このような規制をなんなくクリアしていることでしょう。

基準から実践へ

改良されたSPMによって多くの機関は恩恵を受けることができるかもしれませんが、全ての機関が同じ方法で実行に移していくことは不可能です。そこで、サービス提供者やSPTFメンバーを含めた実践者の幅広い豊かな知識により、様々な方法が導かれています。あるところでは、特定の組織的チャレンジ、例えば従業員の離職率や、顧客の不満足度、焦点を当てた顧客にサービスが行き届かない、といったことに取り組み対処する為にSPMを使用しています(例1)。またあるところでは、社会的目標を再評価し、強化することから始めます。改善して行く為にどのSPMから実践していくか優先順位を決める前に、CERISE Social Performance Indicator(社会性評価指数)(注4)のようなツールを使って現段階でのSPMをどれだけ実践できているか見極めているところもあります。経験に基づいて言えることは、行動計画を考えることから始め、徐々に実行へ移していくという方法が最良だということです。段階的に実行に移して行くと、従業員のサポートを得つつ、変化に対する顧客の反応を分析し、優先度の変更にもすぐに対応できます。

(例1)ここでウガンダのVisionFund (以下、VisionFund, Uganda、VFUと表記)における事例を紹介します。

VFUはUniversal StandardsのSPM実践において成功を収めています:
VFUは顧客が直面する障害を取り除くよう、顧客のニーズ、何を望んでいるか理解を深める為にSPMを使用しています。
顧客の60%を女性にすると目指す一方、数年間その割合は30%と目標をかなり下回っていました。VFUは、二つの決定事項が原因であったと気付きます。一つは個人ローンよりも、グループローンに力を注いでいたこと、もう一つは土地の所有権を担保とするよう要求していたことでした。

その二つの政策を取ったことが女性顧客獲得の妨げとなっていたのです。男性たちが自分の妻たちをグループレンディングに参加させようとせず、またウガンダの多くの女性が土地の所有権を持っていませんでした。この問題に気付き、VFUは個人ローンとグループローンのバランスを戻して、担保も代替のものを受け付けるようにしました。女性のニーズに合った商品へと調整して18ヶ月後、VFUの女性顧客へのアウトリーチは42%まで上昇しました。

(本文にあるUniversal Standardsの6つの要素に関する訳は、ここでは省略させて頂きます。前述、Living in Peaceのコラム、ソーシャル・パフォーマンス評価のフレームワーク (2014/10/13)の一部をご参照下さい。)

機関全体でSPMに取り組む

SPMを“特別なプロジェクト”とするよりも、あらゆる多くの機関にSPMを浸透させることが不可欠です。各機関のSPM遂行計画は、それぞれの戦略やビジネス計画に見合ったものであるべきで、役員たちは社会的成果をモニターし、従業員はソーシャル・パフォーマンスのタスクに責任を持って取り組み、CEOは社会的目標を達成することに力を注がなくてはなりません。

カンボジアの大手マイクロファイナンス機関、AMK(注5)には、アウトリーチ、顧客保護にインセンティブを与えるスキームをもったHRシステム、分析システムの開発や社会調査に重点的に取り組む専用研究部署、顧客保護や顧客サービスの財務的、及び社会的側面を扱う監査部があります。AMKには、戦略やオペレーションがソーシャル・パフォーマンスのモニタリングや研究データに対応しているか確認する為の経営委員会も行われています。

こうした機関全体の取り組みは、新たな業務を長く定着させることができます。顧客を第一に考えた、責任ある金融サービスの提供を可能にする為に、Universal Standards、及び添付ガイドはSPMの理解を深める上で大きな手助けとなるでしょう。

マイクロファイナンスがミッションから逸脱してしまうことは決してあってはなりませんが、ガイドラインができたからと言って、誰もが簡単にそれに沿って進める訳ではないでしょう。しかし、マイクロファイナンスはビジネスとしてだけでなく、どれだけ金融サービスを必要とする人々に届けられるか、それをどれだけ持続させていくかという本質を失わないことが重要であり、その本質を見失わない為の道しるべとして、このSPMの活用が更に浸透し、顧客のことを第一に考える環境が整うことを願っています。その積み重ねが結果的に金融包摂に大きな効果をもたらすはずです。今後もSPMの可能性について、また私たちが企画するファンドのインパクトについて説明責任を果たせるよう、調査を続けて行きたいと思います。

(米山倫代)

【参考資料】
https://openknowledge.worldbank.org/bitstream/handle/10986/20261/909500BRI0Box30anagement0May0201401.pdf?sequence=1

【注釈】

(1) http://www.sptf.info/

(2) http://sptf.info/resources/resource-center

(3) http://sptf.info/images/usspm englishmanual 2014 1.pdf

(4) http://spi4wiki.pbworks.com/w/page/74245904/SPI4 Home

(5) http://www.amkcambodia.com/