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コラム

国を追われた人々が直面する課題とは? ~金融包摂と難民問題~

世界中では多くの人が身の危険を理由に、自分の町を離れ、海や国境を越え、新しい土地での生活を余儀なくされている。2016年に紛争や迫害が原因で国内外に強制移動をせざるを得なかった人々の数は、過去70年のうちで最多となる6,560万人を記録した(UNHCR, 2016)。最近のニュースでは、迫害から逃れてミャンマーから隣国バングラデシュへ渡るロヒンギャ民族の人数が、50万人以上に達したことが報道されている(UN, 2017)。

金融包摂やマイクロファイナンスに関する話題は、途上国を中心とした貧困問題に焦点をあてて、取り上げられることが多い。しかし、他国に逃れた難民や紛争状況下に取り残された国内避難民も、適切な金融サービスへのアクセスが大きく制限されていることを忘れてはならない。例えば、人道的危機の影響を受けた国に暮らす人々は、影響を受けていない低所得国に住む人々と比較して、正規に登録された金融機関を利用して貯蓄を行う割合が約3分の1、融資へアクセスできる割合が約2分の1に留まると報告されている(CGAP, 2017)。

難民問題は日本にいると肌で感じることが少なく、実際に難民として生活する人々と接する機会もほとんどない。こうした人々は、どのような状況で生活しているかを知っているだろうか? 今回は、難民と金融包摂に焦点を当て、彼らがどのような財政状況下にあり、金融サービスにアクセスする上で、どんな課題に直面しているかを紹介する。

  © MOAS

 

難民・避難民の経済・生活状況

国内外への退去を余儀なくされた人々は、以下の理由から限りなく脆弱で不安定な経済状況下に置かれる。


自己資産の紛失

まず、紛争や迫害、暴力等、緊急事態から逃れてきた場合、これまで所持していた現金、車、高価な家具や土地などの資産、銀行預金を残し、無一文で避難する場合が多い。ヨルダンへ逃れたシリア難民の中には、数日で帰国できることを信じて、家の鍵だけを持って逃れた人々もいる(Gurdian, 2017)。
©Andrew McConnell/British Red Cross

既存金融サービスへのアクセスの制限
母国で使用していた銀行預金、送金、保険や融資などの公式な金融サービスに、一時的、もしくは長期的にアクセスできなくなる。クレジットカードや身元証明書類を持ち出してこなかった、もしくは紛失した場合、もともと使用していた口座へすぐにアクセスすることも制限される。 

家族、親戚や身内、親しい友人との分離
新しい土地では、時に母国や自分の町で一緒に暮らしていた家族、親戚、親しい友人と、物理的に離れて暮らすことも多い。緊急時に財政面、生活面でこれまで頼っていた人とのつながりが弱くなり、社会的セーフティネットが非常に脆弱な状態になる。離れて暮らす知人への連絡手段や、国や地域をまたぐ送金手段がない場合、知人から生活資金を送ってもらうことも難しい。 

社会保障の欠如
異国への退去を強いられた人は、母国で保障されていた基本的な医療や教育、保険サービスへのアクセスを失う。医療や保険に関していえば、難民キャンプや人口密度の高い避難先では、感染症の蔓延リスクが高い上、物理的な安全性が低い状況にもかかわらず、医療や保険へのアクセスが制限されていることを意味する。 

不安定な収入と変動の激しい支出
収入や支出を予測することが難しい。難民の主な収入源は、一時的な労働から得た収入、家族や親戚からの不定期な送金、援助機関による不定期の補助金支給であり、不確実性が高い。支出に関しても、避難状況下における突然の病気や頻繁な国内外・キャンプ間の移動などが発生することから、変動が激しい状態になる。

 

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