Living in Peace Microfinance Project

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貧困削減と金融包摂を目的とするマイクロファイナンスの歴史

〜連載
マイクロファイナンスと機会の平等を改めて考える〜
第3回
貧困削減と金融包摂を目的とするマイクロファイナンスの歴史

 

マイクロクレジットの勃興

 マイクロファイナンスの起源としての「共同体の結束力を用いた小規模金融」は18世紀以前から存在していました。日本の頼母子講や朝鮮半島の契、ガーナのsusu、インドのchit fundなどがそれにあたります。そして、第二次世界大戦後には、農業発展を促すための信用貸付が途上国を中心に大規模に普及しました。1950年代から70年代には、政府主導で地方自治体所有の金融機関や農業組合を通じた農業生産性向上のための小規模貸付プログラムが数多く実施されています。しかし、これらは往々にして、返済率が低いことや農業生産性向上に必要な長期融資は大農家に集中しがちであったことなどの問題を抱えていました。

 こうした途上国開発政策と並行して、1970年代には小口融資(マイクロクレジット)を提供する民間団体が各地で登場しました。例えば、1974年にはバングラデシュの農村開発NGOのBRAC (Bangladesh Rural Advancement Committee)が融資プログラムを提供し、2006年にノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌスも1976年に同国でマイクロクレジットを開始しました。ラテンアメリカでも、1973年からACCIONが実施しています。これらの組織が提供するマイクロクレジットは90%以上という高い返済率を維持しつつ、貧困層を対象に堅実に顧客を拡大させていきました。

金融システムアプローチの登場

 一方で、マイクロクレジットが普及するにつれ、貧困層は融資以外の金融サービスも求めていることが徐々に分かってきます。例えば、先進国に住む私たちは想像しづらいかもしれませんが、途上国の多くの貧困層は貯蓄をする際に金利を受け取るどころか、「手数料を支払う」ことも少なくありません。手元に現金があるといつの間にか使ってしまうので、手数料を払ってでも貯蓄できた方がましだ、と考える人々が多いためです。貧困層の間では融資だけでなく貯蓄のニーズも高かったのです。

 そのため、1990年代には融資だけでなく、顧客の多様な金融サービス需要に合わせた金融システムを構築するべきだとする「金融システムアプローチ」が登場し、支援の主流となっていきます。貧困層への融資を行うマイクロクレジットから、それ以外の貯蓄・保険・送金など多様な金融サービスを提供するマイクロファイナンスへの変化はこの時期に起こったと言われています。

「連帯責任制」から「個人融資制」へ

 融資の方法にも変化が見られました。当初マイクロクレジットにおいては「連帯責任制」が普及していました。融資を希望する村人を5人組のグループにした上で、その中で順番に融資を受けられる仕組みです。貧困層である借り手の信用リスクが高い分、連帯責任制を取ることで仲間を裏切れない気持ちとピア・プレッシャー(仲間同士の圧力)を働かせることにより、高い返済率を維持していました。

図表1:マイクロファイナンスに関する年表

 しかし、借り手であるグループのメンバーはメンバー自身が選別するため、返済が難しいと思われてしまうと、より貧しい人々はグループに入れてもらえず、マイクロクレジットにアクセスできません。また、もっと自由にお金を借りたいという人々にとっても、グループの他のメンバーと借入額を合わせなければならない点で連帯責任制はあまり好ましくない仕組みです。そのため、「個人融資制」と呼ばれる、個人に融資をするスキームも増えてきました。連帯責任制を導入し、普及させた存在であるグラミン銀行も2002年には個人融資制を採用するようになりました。

商業化とその反省

 2000年に、国連ミレニアムサミットにて国連ミレニアム宣言が採択され、2015年までに採択する目標としてミレニアム開発目標(Millennium Development Goals: MDGs)が掲げられました。この流れを受け、国連は開発途上国の貧困撲滅と自立支援を趣旨として、2005年をマイクロクレジット元年と宣言しています。これらにより、2000年代以降はマイクロファイナンスへの注目度が高まり、様々な主体がマイクロファイナンス市場へ参入するようになります。そうした中で、規模の大きなマイクロファイナンス機関は新規上場(IPO)を行うなど、商業化の動きを進めていきます。年率100%を超える金利を設定するマイクロファイナンス機関も見られ、2000年代後半から貧困層の多重債務が問題視されるようになりました。

 この反省から、マイクロファイナンス業界において、過剰債務の回避や顧客への説明責任などを求める「顧客保護原則」を実施する運動として「スマートキャンペーン」が設立されました。また、マイクロファイナンス機関の評価や格付においても、「顧客保護原則」が守られているかなどといった社会的業績管理(SPM:Social Performance Management)の考え方が普及してきています。

近年の潮流

 近年、政府機関や国際機関、民間団体などは、貧困層が必要とする金融サービスを利用できる状況を「金融包摂(Financial Inclusion)」と呼び、その実現へ動いています。実現のための手段は、融資、保険、貯蓄などの金融サービスや金融教育の提供など様々です。

 これらの手段のうち、近年注目を集めているものの一つはデジタルファイナンスです。例えば、2007年にケニアでモバイル送金サービス「M-PESA」が開始され、その後飛躍的に普及しています。2014年の世界銀行の調査によると、ケニアでは金融機関の口座を保有する人よりモバイルマネー口座を保有する人の方が多いとみられます(図表2)。また、世界的なクレジットカード会社や金融機関なども途上国のデジタルファイナンス事業に参入しており、金融包摂のさらなる進展が期待されています。(出所)世界銀行より作成

 

参考文献

  • バナジー, E.デュフロ(2012)『貧乏人の経済学 もういちど貧困問題を根っこから考える』, 山形浩生訳, みすず書房
  • World Bank, ”Global Findex 2014” http://www.worldbank.org/en/programs/globalfindex
  • 粟野晴子(2015)「マイクロファイナンス中級講座1『マイクロファイナンスはどのように変遷したのか、そこから何を学べるか』」http://www.oikocredit.jp/library/mf-lec/int1/
  • 岡本真理子・粟野晴子・吉田秀美(1999)『マイクロファイナンス読本』, 明石書店