国を追われた人々が直面する課題とは? ~金融包摂と難民問題~

金融サービスへアクセスできない

こうした不安定な経済・財政状況下で、難民・避難民は見知らぬ土地で金融サービスにアクセスする際に、多くの障壁を目の前にする。
例えば、

  •  正式に登録している住所がない
  •  ID、免許証、パスポート等の身元証明書類がない
  •  公式な金融機関は、将来、国内外へ移動する可能性のある難民を返済リスクの高い顧客とみなし、融資を拒む
  •  信用情報(クレジットヒストリー)がない
  •  固有資産や担保がない
  •  難民・避難民は、避難国の言語、文化や金融に関する慣習やその国特有のサービスに無知である
  •  難民自身が、自身の出身国等の個人情報の開示を拒む
  •  行き着いた町や都市によっては、正規の金融機関がなく、非正規な現地の賃金業者しか存在しない

上記のような理由から、融資はもちろん、銀行口座を開くことすら難しい状況である。例えば、ヨルダンへ逃れたシリア難民のうち30%が何らかの形で融資を手にしているが、そのうち公式な金融機関からの融資はたった1%である(CGAP, 2017)。極端なケースでは、2014年にイギリスの大手銀行HSBCは、イギリスからシリアへの不正な銀行送金を防ぐために、シリア国籍の顧客全員の銀行口座を閉鎖するという措置を取った (Independent, 2014)。銀行口座は、単なる貯蓄口座ではない。身分を証明する重要なツールとして、教育・医療・ビジネスに関わるローン、賃貸契約、各種支払いなど生活を安定させるための多くの活動を可能にする。難民であること、特定の国の出身であることといった自分ではどうしようもない要素によって、やっと行き着いた先でも、安定した生活状況を確保することが難しい。

こうした人々にとっても、貯蓄、送金、保険等の基本的な金融サービスは不可欠である。行き着いた土地で、衣食住を確保するためには、身内からの送金や既存の金融口座からの現金の引き出しが必要になる。次に来るかもしれない国内外への移動に備えて、安全な方法で、不定期に得た資金を貯蓄し、同時に、緊急時にすぐにお金を引き出せるような状態も必要である。避難した土地で、長期的に生活をすることを決めた場合、住居の賃貸・購入やビジネスを始めるための融資や医療、教育に関する保険も必要である。

彼らが、少しでも安定的な生活を送り、自己実現できるような環境を整えるためには、どのような方法で、彼らの金融サービスへのアクセスを改善できるだろうか? 世界中で、難民や避難民の数がますます増加する中、金融機関、マイクロファイナンス機関、開発援助機関などは、いくつかの対処を試みている。次回は、実際に難民向けの金融サービスを提供している事例をいくつか紹介し、金融サービスを提供する機関、ドナーや政府が果たす役割を探ってみたい。

(畑山)

 

Reference

Brenda Santoro and Ahmed Dermish, 2016. “Financial Inclusion and Immigration in Europe – Disrupting Identity Norms” Center for Financial Inclusion Blog. Available from:
https://cfi-blog.org/2016/02/09/financial-inclusion-and-immigration-in-europe-disrupting-identity-norms/

CGAP, 2017. ‘Humanitarian Crises: Understanding Demand for Financial Services” FINANCIAL SERVICES IN HUMANITARIAN CRISES. Available at:
http://www.cgap.org/blog/humanitarian-crises-understanding-demand-financial-services#comments

Daniel Balson. 2016 ‘The Future of Refugee Financial Inclusion’ Center for Financial Inclusion Blog. Available from:
https://cfi-blog.org/2016/11/15/the-future-of-refugee-financial-inclusion/

Daniel Balson. 2016. ‘Financial Inclusion of Refugees: An Introduction’ Center for Financial Inclusion Blog. Available from:
https://cfi-blog.org/2016/09/20/financial-inclusion-of-refugees-an-introduction/

El-Zoghbi, Mayada, Nadine Chehade, Peter McConaghy, and Matthew Soursourian. 2017. “The Role of Financial Services in Humanitarian Crises.” Forum 12. Washington, D.C.: CGAP, SPF, and World Bank.

Independent, 2014. “Exclusive: ‘Shameless’ HSBC shuts Syrian refugees’ bank accounts in Britain” Available from:
http://www.independent.co.uk/news/business/news/exclusive-shameless-hsbc-shuts-syrian-refugees-bank-accounts-in-britain-9655838.html

Kim Wilson and Roxani Krystalli. 2017. “Financial Inclusion in Refugee Economies” The Fletcher School, Tufts University.

The Guardian. 2017. “All I brought with me’: Syrian refugees show their possessions – in pictures” Global development. Available from:
https://www.theguardian.com/global-development/gallery/2017/mar/24/syrian-refugees-show-their-possessions-in-pictures

UN. 2017. “In Bangladesh, UN food relief agency chief urges support amid massive Rohingya influx” UN News Center. UN. Available from:
http://www.un.org/apps/news/story.asp?NewsID=57782#.WeM-m1u0PIU

UNHCR. 2016. Global Trends: Forced Displacement in 2016. UNHCR.

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