Non-Financial活動 Excel研修フォローアップ

Living in Peace(以下、LIP)のNon-Financialチームは、2020年の7~8月にかけて、ミャンマーのマイクロファイナンス機関であるMJI ENTERPRISE Co., Ltd(以下、MJI)のスタッフ向けに、グラフ・チャートにフォーカスしたMicrosoft Excelの自習問題を提供しました。この取り組みは、2019年11月にミャンマーのヤンゴンにて行ったExcel研修のフォローアップ活動です。 ヤンゴンでの活動についてはこちらをご覧ください。 Non-Financial活動 in Myanmar☆   2019年の研修ではスタッフのみなさんが一つの会場に集まり、その場でExcelの操作に関する質問や回答を行いましたが、2020年はCOVID-19 の影響でLIPメンバーの現地渡航が難しく、対面の研修を実施することができなくなりました。この様な環境でも効果的な研修を行い、スタッフの技能向上に貢献するため、研修方法を検討してきました。   「どうすれば非対面で効果的な研修ができるか。」 「現場で働くスタッフの実務に役立つスキルは何か。」   このような観点でMJIスタッフから意見を集めた結果、スタッフが作成する月次レポート(マイクロファイナンスを利用する顧客の推移や返済状況などをまとめたレポート)に掲載するグラフとチャートに重点をおいて、自習用の練習問題を提供することになりました。   これまでの月次レポートでは実績数値を表形式で記載していましたが、今回の活動によってデータを可視化できるようになり、レポートの品質向上につながりました。   研修に取り組んだスタッフからは、次の様な声が届きました。 ―2019年の研修で学んだグラフ・チャートの作り方の復習ができた。 ―研修が普段の仕事に直結する内容だったので、取り組みやすかった。 ―成績に応じて表彰されたので取り組むモチベーションにつながった。   今後も引き続き、資金面以外においてもマイクロファイナンス機関を支援し、貧困削減のためにLiving in Peace全員で活動していきます!

気候変動がもたらすマイクロファイナンスの在り方

チャプター1:そもそも気候変動って起きているの? 目次: はじめに 気候変動とは? 気候変動が及ぼす影響 気候変動が起きている事実 気候変動の原因 気候変動による実際の被害 経済的損失の実例     1. はじめに  途上国の貧困問題を考える上で気候変動が注目されています。気候変動によって引き起こされる自然環境の変化が農業や漁業などの出来に大きく影響したり、台風などの異常気象によって金銭的蓄えが十分ではない人の生活が脅かされる事例が増えてきたためです。こうした中、経済的弱者に対して金融サービスを提供するマイクロファイナンス機関が気候変動リスクの観点から支援を行う事例も出てきています。 「気候変動リスクに対してマイクロファイナンスができること」と題して、全3回に分けてブログを配信していきます。第1回目となる今回は、気候変動問題の概要を解説します。第2回目では、気候変動が貧困に与える影響について、そして最終回では、マイクロファイナンス機関が行う支援の例を紹介します。     2. 気候変動とは?  気候とは地球を覆う大気の平均的な状態を意味します。気候変動問題とは、大気の状態が一定期間に大きく変化していくことに起因する自然環境の変化と、それにより人間などの生物が被る様々な問題のことを言います。 大気が変化する要因は大きく分けて二つあります。エルニーニョ/ラニーニャ現象や太陽エネルギーに代表される自然要因と、温室効果ガスに代表される人為的要因です。太陽から大気が受け取ったエネルギーは大気と接する宇宙空間へ放出されることで均衡が保たれますが、近年は温室効果ガスの影響で大気からの放出が減り、大気の温度が上昇する傾向が指摘されています。     3. 気候変動が及ぼす影響  代表的な気候変動問題として、北極海海域の氷床が融解することで発生する海面上昇や、気温上昇による作物生産の減少や生態系の変化が挙げられます。また、台風などの自然災害の勢力が増したり発生頻度が高くなるといった問題も含まれます。これらの問題に対する国際的な対策の必要性が高まり、1995年から気候変動枠組条約加盟国による締約国会議(COP)が毎年開催されるようになりました。2015年のCOPで採択され、2016年に発効されたパリ協定では、温室効果ガスの削減目標等を定められ、196ヶ国が参加しています。そして、2018年には国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)から「1.5℃度目標」レポートが発表されました。同レポートによれば、2018年時点の世界平均気温は産業化以前と比較して約1.0℃上昇しています。このペースの上昇が続くと仮定すると、2030年~2050年頃には1.5℃上昇し、さらに2100年には、約3~4℃上昇すると推測しています。  同レポートは、気温の上昇の度合いによって生態系や地球環境がどの様な影響を被るかについても予測しています。平均的な気温上昇が1.5℃の場合と2℃の場合で影響の差異を比較しています。0.5℃の違いですが、その影響は大きく異なります。例えば1.5℃上昇の場合、日本国内での猛暑日(35℃以上の日)の年間発生回数は12日~24日ですが、2℃上昇の場合では24日から30日になると言われています。2 また農業や食料安全保障の観点で見ると、2℃上昇の場合、最大約4億人が影響を受けますが、1.5℃に抑えられた場合には最大3600万人まで抑えられます。海の生態系を支えているサンゴ礁は、2℃上昇の場合、2100年には絶滅または99%が消滅する可能性があります。それが1.5度上昇の場合は、消滅を90%以下に抑えることができます。1   影響 1.5℃ 2℃ 水不足 現状+約5億人が水ストレス (2000年時点で38億人) 現状+約6億人が水ストレス 生態系 地表の7%で生態系が変化 (70~90%のサンゴ礁が消滅の危機) 地表の13%で生態系が変化 (99%のサンゴ礁が消滅の危機) 沿岸地域 3100~6900万人に洪水のリスク 3200~7900万人に洪水のリスク 食料 3200~3600万人に作物減産の影響 3.3~4億人に作物減産の影響 健康 35~45億人に熱波の影響 54~67億人に熱波の影響 熱病の罹患率が上昇 (IPCC 1.5℃特別報告書を参考にLiving in Peaceが作成)    同レポートでは、このような気候変動現象を最小限に抑えるための目標として、2030年までの気温上昇を産業化以前と比較して1.5°C未満、あるいはそれ以上に抑制することを掲げています。また、その目標実現のためには「2030年の温室効果ガスの排出量を、2010年と比較して約45%削減することが必須条件である」と結論付けています。1     4. 気候変動が起きている事実  では、実際にどの程度の気候変動が起こっているのでしょうか。気候の状態を観測するためには、 「平均気温偏差」を用いて大気温の変化の程度を検証することが一般的です。平均気温偏差とは、ある期間の平均気温を基準(比較基準値)として、比較対象の年の平均気温がどの程度乖離しているかを示す値です。比較基準値と比較して温度が上昇していれば温暖化の傾向があり、逆に下がっていれば寒冷化の傾向があると判断します。  2020年1月の米国のNASA(アメリカ航空宇宙局)とNOAA(アメリカ海洋大気庁)の公表レポートによると、2019年は1880年の観測開始以来で2番目に温暖であったと結論付けました。3  (GISS NASAのデータを参考にLiving in Peaceが作成)4                                      また同時に公開された上記グラフによると、1951年から1980年までの平均気温を比較基準値とした場合、1980年から現在まで、徐々に気温が上昇していること、また2019年では、基準値と比べて1℃上昇していることが窺えます。     5. 気候変動の原因 (Carbon BriefよりLiving in Peaceで日訳を追記)5  このような地球規模の気候変化について、オックスフォード大学とリード大学の共同研究は、「温暖化と寒冷化を引き起こす要因は様々あるものの、現在これらは主に温室効果ガスによって引き起こされている」と結論付けています。5 上記のグラフでは、世界平均気温の変化を要因分解しています。まず気温を下げる要因として、青色の線で示されているエアゾルが挙げられます。エアロゾル自体が光を反射したり吸収したりすることにより地表へ届く太陽光を減少させる効果で地球上の気温を冷やします。一方で気温を上昇させる要因としては、赤色の線で示されている温室効果ガスが挙げられます。最も代表的な温室効果ガスは二酸化炭素ですが、その他メタンや水蒸気なども含まれます。1960年頃から温室効果ガスが急増したことに伴い、世界の平均気温(灰色の線)が大幅に上昇している様子が窺えます。     6. 気候変動による実際の被害 この記事を読んでいる方も、国内で桜の開花時期が早まっていることや夏に35℃以上を超える日が続くのが日常になっていることなどを、身近に感じていらっしゃるかもしれません。その他にも集中豪雨 (数十分の短時間に狭い範囲に数十mm程度の雨量をもたらす雨) が増加しています。2010年から2019年までの集中豪雨の平均年間発生回数 (約327回) は、統計期間の最初の10年間である1976~1985年の平均年間発生回数 (約226回)と比べて、約1.4倍に増加しています。6 (気象庁のデータを参考にLiving in Peaceで作成)6 温暖化の影響は海にも及びます。地球の70%の地表を占める海は、温暖化によって発生した熱全体のうち約93%を吸収しています。そのため、海面水温が上昇します。下記の表は1981年から2010年を平年値と設定した場合の乖離を表しています。7 […]

Non-Financial活動 in Myanmar☆

2019年11月初旬、ミャンマーのヤンゴンにおいて当地のマイクロファイナンス団体であるMJIENTERPRISE Co., Ltdのスタッフ向けに四日間のExcel研修を行いました。前回カンボジアで実施したビジネススキル研修では「より受講者のレベルに適した研修を!」という教訓を得たため、今回は現地との密なコミュニケーションに力を入れながら事前のレベル分けテストによるチーム編成を実施し、濃い研修の時間を過ごすことができました。 Living in Peace(LIP)では過去10年間に渡り、日本の投資家から募ったお金を途上国のマイクロファイナンス機関(MFI)に提供する事業を展開してきました。継続的な資金提供を通じてMFIのマイクロクレジット事業を支援することで、現地の人々への少額資金の融通を喚起し、ひいては現地の貧困削減に資するという信念の元で活動を行ってきました。その一方、近年マイクロクレジット事業の質を高めるため、ファイナンスの面以外での各種支援を望む声が多く聞かれるようになりました。その一つとして、MFIを運営し、支えている現地スタッフ向けのビジネススキルの育成・向上におけるアドバイスを求められるようになり、今年度より新たな活動として動き出したのがLIPのNon-Financialチームによる、MFIスタッフ向けのビジネススキル研修です。 今回のヤンゴンでは、各支店の支店長や副支店長、会計担当スタッフや、本店の間接部門で働くスタッフ等、総勢約40名の受講者を対象にExcelに特化した研修を行いました。事前のレベル分けテストによりチーム編成を行い、各チームのレベルに応じてExcelの主要機能(レベル別の関数/グラフ・表作成)の説明、練習問題の実施と解説を行いました。 各研修の最後には、研修内容の理解度測定を兼ねた演習問題をグループ対抗戦で行い、優勝グループには日本からのお土産をプレゼントしました。全員が熱く盛り上がってお互いに教え合いながら課題を解いていく姿や、受け身ではなく積極的に質問してくる、その「学びたい!」という姿勢に深い感銘を受けました。研修の企画から実施まで行ったLIP Non-Financialチーム一同、今後も引き続きファイナンス面以外でのサポートも継続して力を入れていきたいと強く感じた瞬間でした。  

Non-Financial活動 in Cambodia♪

2019年1月末、二日間の予定で、カンボジアのプノンペンにてマイクロファイナンス機関向けにビジネススキル教育プロジェクトを行いました。 LIPは過去10年間に渡り、日本の投資家から募ったお金を途上国のマイクロファイナンス機関(MFI)に提供する事業を展開してきました。継続的な資金提供を通じたMFIのマイクロクレジット事業を支援することで、現地の人々への少額資金の融通を喚起しひいては現地の貧困削減に資するという信念の元で活動を行ってきましたがその一方、近年マイクロクレジット事業の質を高めるため、各種支援を望む声が多く聞かれるようになりました。 特に、既にLIPが資金を提供しているカンボジアのMFIからスタッフ向けの教育を望む声がとり わけ多く寄せられていました。そのため、今回はこのような現地の声に応える形で、現地スタッフのビジネススキル向上を目的としたプロジェクトを実施しました。「世界の貧困を削減する!」というLIPの活動の一環として、全員プロボノで多様な専門 性を持っているという組織の強みを生かした教育プログラム研修でした。 プロジェクトの目的は、MFIで働く現地スタッフの知識や技能の向上を通じて、事業の効率性を高めることでした。Excelの関数使い方やピーボットテーブルを用いたデータ分析方法の紹介、月次報告書(マイクロファイナンス顧客管理に関する社内資料)作成におけるパワーポイントの活用方法などをカリキュラムに取り入れ、MFIスタッ フの知識・技能の向上を目指しました。従来のファンドという手法だけでなく、人材育成を通して途上国のMFIの成長に貢献するという新たな手段に手応えを感じた経験でした。 今後もこのようにFinancial & Non-Financialの両面で様々なアプローチを通じて、“働きながら社会を変える”志を持ったチームメンバー一人一人が力を合わせて、世界の貧困削減へのアクションを起こしていきたいと思っています。

マイクロファイナンス顧客向けフリーペーパー 「Mango!」編集メンバーインタビュー

BOP層の情報ギャップ解消と金融リテラシー向上などの事業・生活支援を目的に創刊されたマイクロファイナンス顧客向けフリーペーパー「Mango!」の編集に携わっているMJIスタッフへ会いにヤンゴンのMJI本店を訪れた日は、雨季ということもあり朝からずっと雨だった。大通りから徒歩15分ほど歩くと、濡れた緑にひっそりと囲まれた個人宅のような佇まいのMJI本店が現れた。 写真:MJI本店 チャイムを鳴らすとMJIの代表である加藤さんが出迎えてくれ、「今、ちょうどMango!の編集会議中です」と、中に案内してくれた。そこでは20代くらいの若者たちが壁にプロジェクタでスケジュールを投影し、リビングで何やら議論をしていた。   写真:Mango! 編集会議 流暢な英語でインタビューに答えてくれたのは、コンテンツ企画と編集を行なっているThant Kyaw Ooさんである。   写真:MJIのCSR担当、Mango!編集メンバーであるThant Kyaw Oo青年   不思議な巡り合わせを感じ、Mango!の編集に参加 ーー どのような経緯でMango!の編集に関わり始めたのですか? Thant Kyaw Ooさん: MJIに入社した理由を説明するために、まず僕がもともとどんなことに興味があったかを説明しますね。 僕は大学の工学部2年生だった頃に、友人2人(うち1人は日本人)とMIVAという学生団体を立ち上げ、友人たちから寄付を募って、孤児院の子供たちに絵本を届ける活動をしていました。 写真:MIVAの活動風景   僕は元々このような社会貢献活動に関心があったわけではなく、大学1年生の頃は授業に出てバイトに行くという普通の学生でした。しかしあるとき、たまたま友人に誘われて一人暮らしの老人の家を訪れ、本を読んであげたり料理をして一緒にごはんを食べたり、パゴダや教会に連れて行ってあげたりするボランティア活動に参加しました。そのとき僕は、活動を継続していくうちに手を貸した人たちの表情がどんどん明るくなっていくことが分かりました。それがとても嬉しかった。この経験を通して、自分が人と話すのが大好きであることと、それが結構うまいということを自覚しました(笑)   卒業後はハンディキャップのある人を支援するNGOで、コミュニケーションオフィサーとして働いていました。ただ、1年もすると政府への申請書類作成など事務作業などが増え、本来自分がやりたいこととの間にズレを感じるようになっていました。そんなときにMJIのことを知りました。そして面接の場でミャンマーで活動する日本企業が協働で立ち上げたBOP層向けフリーペーパー作成プロジェクトのことを聞き、Mango!の活動にとても惹かれました。さらに初期の編集メンバーとしてMIVAで一緒に活動していた日本人の友人が1年前までMango!に携わっていたことを知り、不思議な巡り合わせを感じてMJIに入社しました。   今年2月にMJIに入社したばかりでマイクロファイナンスのことは全く知らなかったため、今は業務内容について一生懸命勉強中です。そしてマイクロファイナンスを通じて、農村部の女性たちの生活レベルの向上に貢献したいと思っています。他にはMJIで働きながら開発経済学を学ぶため、ヤンゴン大学の夜間部にも通っています。ミャンマーの農村部の問題を理解するのに、大学で学んでいることが役立っています。   Mango!を通して顧客の方と関わるのが面白い ーー 雑誌の記事を書くのも、基本的には人に対して話しかけるようなものですからね。今のMJIでのMango!の編集の仕事は、Thant Kyaw Ooさんの人と話すのが好きという強みが活かせるポジションだと思います。 Thant Kyaw Ooさん: そうですね。僕は話したり書くことで人に物事を伝えるのが得意なので、MJIの広報活動として外に情報を発信するのは向いています。そしてMJIの女性顧客の方たちの興味があること、例えばビジネス・教育・健康などで新しい記事の内容を考えるのも好きです。   ーー 雑誌作りはどのように進められているのですか? Thant Kyaw Ooさん: Mango!のコンテンツは、子供が怪我した場合の応急処置といった”定型コンテンツ”と、教育やビジネスでの顧客のサクセスストーリーといった毎号変わる”特集コンテンツ”の2種類で構成されています。特集コンテンツの企画・編集は、創刊時からプロジェクトを進めてきたミャンマー人編集長、協同でプロジェクトを運営しているリンクルージョン社のスタッフとMJIの日本人インターン生と僕の4人で決めています。   今は4人で集まって2ヶ月後の特集コンテンツ企画会議中で、編集スケジュールを策定中です。特集するコンテンツが決まったら、顧客とのインタビュー日時を各支店マネジャーと調整します。それを元に僕たちで記事を書いて、最終的に内容に間違いがないか顧客の方にも確認していただいて初めて完成となります。やはり顧客当人もMango!を読むため、「あれ、私が意図していたこと違う!」とならないように気を遣っています。   写真:Mango!のコンテンツ企画・編集チーム:リンクルージョン社のスタッフ、編集長と   例えばこの記事は(紙面をさしながら説明)、農村部に住みながらも家族のサポートで高等教育を受けた顧客の子供が就職して、やりがいを持って働いているインタビュー記事です。子供に教育を受ける機会をつくる大切さを伝えています。 教育によるサクセスストーリーはMango!で最も人気のあるコンテンツの1つですね。他にはマイクロファイナンスを利用してビジネスで成功した顧客のサクセスストーリーも人気があります。村の中で生活しているとなかなか身近なロールモデルに出会えません。これを読んだ顧客が事業へのモチベーションを高めてもらえるように心がけています。   写真:Mango!特集記事:教育とビジネスの顧客サクセスストーリー ーー 昨日MJI顧客のセンターミーティングを3つほど見学してきたのですが、いずれのセンターでもお母さんたちが子供を大学まで行かせたいという意志がありました。ミャンマー全体の大学進学率が8%であることを考えると、その意識の高さに驚くと同時に不思議に思っていました。Mango!で子供の教育の重要性などを扱っていることを聞いて納得です Thant Kyaw Ooさん: また、読者には小さな子供を持つ女性が多いため、子供向けのポエムや料理のレシピのコラムも人気があります。 ーー なるほど、料理レシピを見て日々の献立に頭を悩ましているは、どの国のお母さんも同じですね(笑)   写真:Mango記事:料理レシピと子供向けのポエム   Mango!を真っ先に読むのは、顧客の子供? Thant Kyaw Ooさん: Mango!では子供のいるお母さんたちがメインの読者であることを意識してコンテンツを作っており、インターネットの使い方から多重債務の怖さまで、幅広いトピックを漫画で伝えています。漫画コンテンツは子供に大人気で、顧客からの話ではMango!をもらうと真っ先に子供が漫画を読むそうです(笑)   自分たちで漫画コンテンツを制作する場合は、内容にあうイラストをイラストレータの方に頼んで描いていただきます。時間も手間もかかるのですが、漫画にするとやはり顧客の方からの評判が良いです。   写真:Mango!記事:インターネットの使い方   延滞防止策も視野に入れ新体制でスタートしたMango!チーム ーー 多重債務の防止対策として、漫画でその怖さを伝える以外にも何かやられているのですか? Thant Kyaw Ooさん: 実は、今年4月からMango!では顧客がマイクロファイナンスとより健全な繋がりを構築できるよう活動していく方針を強化しました。これに伴い、より顧客目線の情報が提供できるようにミャンマー人中心の体制に変えました。   また、MJIでもCSR活動を強化しています。返済が滞ったセンターの現場に赴き、返済できない状態に陥っている原因をヒアリング調査する活動も実施しました。するとそのような顧客はMango!の金融教育の記事を読んでいない人が多いことも分かりました。ミャンマー農村部の女性顧客たちは、日常生活でのお金の管理方法が分かっていない人が多いです。彼女たちに対して僕は教えるという方法ではなく、顧客の口から語られる彼女たちの心配事にまず耳を傾けます。ビジネスの話から子供の教育まで様々な問題があります。そして問題を解決するのに役立つMango!の記事を紹介し、彼女たちの生活向上にどのように役立たせることができるか説明します。   写真:Mango!記事:ファイナンシャルリテラシー   返済できずに人間関係をこじらせ、苦労している顧客の女性たちを見るのは辛いです。僕はMango!を通して金融教育や子供への教育の必要性を記事として扱うことで、彼女たちがそのようなトラブルに陥らないようにサポートしたいと思っています。延滞が起きないことは顧客の女性たち当人とMJI双方にとってハッピーなことです。僕はMango!を利用した情報発信と顧客の人たちと直接話すことを通して、顧客の女性たちの生活向上とMJIという組織の成長に貢献していきたいです。   ーー人と話すのが好きというご自身の長所を活かして、Thant Kyaw OoさんがMango!に取り組まれていることがよく分かりました。顧客の方と直接話して得た気付きが次のコンテンツ企画に生かされるのでしょうね。本日はありがとうございました。   インタビューを終えてMJI本店を後にする頃、辺りはすっかりうす暗くなっており、窓の灯りの向こうには熱心に編集会議をしているMango!編集メンバーの姿が見えた。

「自分の人生の手綱を自分で握る」-MJI ENTERPRISE Co., Ltd.の CEO 加藤侑子氏 インタビュー

ミャンマーのマイクロファイナンス機関であるMJI ENTERPRISE Co., Ltd.(MJI)のCEOを務める加藤侑子氏にインタビューをしました。 ーー現在ミャンマーのマイクロファイナンス機関MJIでCEOを務めているとのことですが、そもそもどのような経緯でミャンマーに行くことになったのでしょうか? 加藤:高校生の頃、タイのチェンマイへ交換留学に行った経験から、将来アジアで働きたいと漠然と思っていました。高校を卒業して日本で働き始めたのですが、その思いが忘れられず、2012年にアジアへの投資を検討している日本の会社がマネージャーとして現地に行ける人を募集していると聞いて「これだ!」と思い手を上げました。 アジアで働きたいという強い思いがあっただけで、当時はマイクロファイナンスについても知りませんでしたし、自分がCEOになるとも思っていませんでした。 当時、その会社はカンボジアかミャンマーで金融事業か不動産事業への投資を検討しているとのことで、最終的に私はミャンマーに行くことになりました。 この時まで私はミャンマーに行ったことはなく、そういえば交換留学でチェンマイに行った時、ホストファミリーが「あちら側がミャンマーだ」と川の対岸を指差していたくらいの印象でした。 最近はヤンゴンの街も賑やかになりましたが、私が初めてミャンマーに行った頃は軍事政権から民主化への移行期で、街灯も少なく今のヤンゴンとは比較できないくらい暗く静かな街でした。 とりあえずミャンマーに行き、市場調査を開始することと並行して、ミャンマーで会社設立をすることになりました。ミャンマーでの手続は苦労の連続で、行政の担当官が人によって言うことが違うこともよくありましたね。 ーー聞いているだけでも、とても大変そうですね。 加藤:そうですね。苦労は多かったですが、不思議と苦になりませんでした。お料理で例えると、レシピをちゃんと見て材料を揃え計量して料理する人だと大変かもしれませんが、私はそこにある材料を使って目分量で料理するタイプで、大変さはありましたが逆に面白さとやりがいを感じる毎日でした。やばい、面白いみたいな(笑) ーーミャンマーで金融事業か不動産事業を検討していたところ、最終的にマイクロファイナンス事業をすることになったのは、どういう経緯だったのでしょうか? 加藤:調査を続ける中、ミャンマーのマイクロファイナンスの第一人者で、MJIの現アドバイザーでもあるウーミンスエ氏に出会ったことがきっかけです。私は彼に出会うまでマイクロファイナンスを知らなかったのですが、彼の指南を受け、自分たちでも調査をしていくうちに、マイクロファイナンスはミャンマーにおいて成長の可能性があると考えました。 また、私は幼い頃に経済的な理由で家庭崩壊、大学進学を諦めた経験があるため、自分と同じように、経済的な理由で悲しい思いをする子どもをなくしたい、勉学を諦める子どもをつくりたくないという思いがずっとありました。 マイクロファイナンスを知った時に、子どもの頃の思いが甦り、「私の天職はこれだ!」と、自分のしたかったこと、事業モデルとしての可能性、双方にとって意味がある事業だと感じました。日本の親会社にマイクロファイナンス事業とその可能性について説明し、ミャンマーにおいてマイクロファイナンス事業の許認可取得に着手しました。 ーーミャンマーで生活されてもうどのくらい経つのですか? 加藤:2012年11月頃から出張ベースでミャンマーに来ており、そろそろ6年でしょうか。先ほどお話しした通り、アジアで働きたいという思いでここまできたので、当初からミャンマーという国に特別な思い入れがあったわけではありませんが、今はミャンマーという国とここで生活する人々が自分の人生の一部だと思っています。ここまでやったら終わりということがない仕事なので、いつも目の前の仕事に取り組んでいるうちに、CEOになってしまったという感じです。 ーー期せずしてミャンマーで、しかもCEOを務めているとご苦労もあるのではないでしょうか? 加藤:次から次へと様々なことが起きますが、それほど文化の違いは感じていません。もちろん生活環境は日本と異なり、停電も多いし、掃除をしても虫が室内に入ってくるし、水道の水も濁っているし…と日々の生活に不便もあります。 私としてはミャンマーに来ても、CEOになっても、自分が大きく変わったとはそれほど感じておらず、ちょっとミャンマー語が上達したかなくらいの変化です。一方で、スタッフや顧客の客様への愛着や感情はとても深くなっていると感じます。 創業当時から働いてくれているスタッフがいるのですが、考え方や文化の違いで意見が分かれることもあるけれど、良いことも悪いことも伝えてくれる素直な人で、いつも助けてもらっています。 ーー今後、MJIはどのような目標を掲げているのでしょうか? 加藤:現在MJIの支店は、ヤンゴンやバゴーを中心に7つあります。ミャンマーでもマイクロファイナンス機関は増加しているものの、多くはヤンゴン市内に集中しており、地方の農村部にはまだ十分に行き届いていない状況です。 ミャンマーは多民族国家で、長く生活をしていると多くの民族の方と知り合うし、スタッフの出身も様々です。彼らから出身地の話を聞いたり、地方を視察しに行くと、マイクロファイナンスサービスが行き届いていない場所、本当にマイクロファイナンスサービスを必要としている人たちに出会います。そうした人たちにサービスを届けられるよう、地方の農村エリアで支店開設を目指したいです。 また、マイクロファイナンスはお金を融資し、返済してもらうことを基本としていますが、お金だけの支援では役に立てないことがあることも、開業して数年間で実感しています。 現在ミャンマーのマイクロファイナンス市場では、スタッフの育成、顧客のファイナンスリテラシー向上などがとても重要です。自分の人生の手綱を自分で握る、マイクロファイナンスがそのきっかけになれるのではと私は考えています。最近問題となっている多重債務についても、複数箇所から収入を超えるお金借りるとどういうことになるかを、スタッフの説明やCSR活動を通じて顧客の皆様に伝えています。 ただお金を貸すのではなく、家計や事業の状況、家族構成も理解した上で、今は借りない方がよい、こういうときのために貯金した方がよいと助言をすることも必要だと思っています。家族何代にもわたって顧客の客様とその家族の未来、資産を守る、農村のプライベートバンカーのような存在をMJIは目指したいと思っています。 加藤さんが登壇するミャンマープロジェクト立ち上げ記念イベント「現地報告会&交流会〜マイクロファイナンスで紡ぐ未来〜」詳細はこちら