新年のご挨拶

新年初のご挨拶を差し上げます。いつもご支援くださり有難うございます。 昨年の10月28日でLiving in Peace設立から10年が経ちました。立ち上げた当初は右も左も分からない状態で前に進んできましたが、この10年をかけて社会人が持ち時間の一部を割きながら社会活動をするプラットフォームをつくることができたように思います。 私も今年の3月で理事長を退任し、今後は一会員としてLIP活動に関わることになります。新年の挨拶の場で、その背景についてお話をさせてください。 機会の平等の重要な構成要素は、金融アクセス(金融サービスを使うことができる)、情報アクセス(基礎教育が受けられ世界中の情報を入手できる)、信頼できる人へのアクセス(自分を無条件で受け入れてくれる人がいる)の三点だと私は考えています。機会の平等を少しでも拡大することは、私が人生をかけて取り組みたい仕事であり、一生をかけて社会をよりフェアな場所にしていきたいと考えています。 今は起業家としても全世界の金融アクセス解決に取り組んでいますが、ビジネスでは解決できない課題も数多くあります。社会において非営利活動の取り組みの重要性が下がることはなく、私はずっとこの活動に関わり続けるつもりです。 一方で、代表者が定期的に交代し続けるのが健全な組織のあり方であり、創業代表が変わっても発展していく組織を作ってこそ、社会はよりよい場所になると私は信じています。そして、設立10年を経てようやく代表交代が実現しました。 今年の4月からは代表理事2名体制に移行し、LIPはさらに強い組織になっていきます。 これからもLIPは機会の平等を通じた貧困削減のために全力で取り組んで参りますので、今後とも変わらぬご支援とご協力を宜しくお願い申し上げます。2018年が皆様にとっても素晴らしい一年となりますように。 慎 泰俊

PR三兄弟による年末放談!僕らがLIPに居る理由

男三人寄ればLIP万歳!? 広報グループのメンズが、2017年を振り返りつつLIPの魅力をちょっぴり真面目に語ります。 プロフィール: (右)コウヘイ ◆LIP歴8ヶ月。本業はSE。面倒見の良い兄貴肌の一方で、スイーツ男子という面も。ベッジュマン&バートンのルイボスティーを飲みながらイデミ・スギノのケーキを食べるのが至福の時間。 (中)カズヤ ◆LIP歴1年半。広報グループのリーダーでありながら、いじられ弟キャラ。ITコンサルタントとして忙しい日々を送り、今年の愛読書は『自分をいかして生きる』『問題解決の全体感』と勉強熱心。 (左)ヒロシ ◆LIP歴2年半。自由人な末っ子タイプ。本業ではタピオカや水道の経営戦略とクリエイティブを務め、LIPでは初の動画作成を実現。今年のベスト本3は『必死すぎるネコ』『「いい写真」はどうすれば撮れるのか?』『決算を読む習慣』 「すべての人にチャンスを!」の源はメンバーの青い炎 —人肌恋しくなる12月のとある週末。LIPが毎週末ミーティングを行うFingate近くのコウヘイ宅で、男子会を行うことに…… カズヤ:こんばんはー、差し入れにミカン持ってきたよ。やっぱり冬はこたつにミカンでしょ。 ヒロシ:僕はビール! 今日は飲む気満々。 コウヘイ:えー、僕、シャンパンとカカオサンパカのチョコレートの気分だったんだけどな。 カズヤ:野郎の飲み会だよ。そんなかっこよさいらないでしょ。 コウヘイ:いやいや、今日の飲み会の様子は広報を通じて”全国放送”されちゃうわけ。「LIPのマイクロファイナンスプロジェクトっていけてる!」ってアピールするためにもそこ、重要でしょ。 ヒロシ:ブランディングってことか。確かに大切。僕はLIPのシュッとしているというか、泥臭くなくクリーンなイメージを大切にしたい思っていてそれを動画を作るときにも考慮したのだけど、ふたりはどんな面をアピールしたい? (※動画はこちらからチェックできます https://youtu.be/KVi1HFjRwrM) カズヤ:僕もLIPメンバーの、暑苦しくなくてスマートな側面をアピールしたいかな。なんか赤より青い炎の人が多い気がする。 コウヘイ:ちなみに青い炎の方が温度高いよね(笑)。で、確かにものすごく熱いものを秘めてるのにそれを顔に出さないで淡々と業務をこなしている人が多い。今年開催した10周年記念のマイクロファイナンスフォーラムも、皆、ポーカーフェイスでソツなくこなしたよね。半年くらい前から準備した実は熱血なイベントだけど。 ヒロシ:フォーラムではメンバー全員がスーツを着てプロフェッショナル感を出すのがお決まりで、それも「ビジネスパーソンという本業をもっている」というブランディング。一方で、今年初めてチャレンジしたクラウドファンディングでは、子どもプロジェクトと一緒に取り組んだこともあって、社会貢献の楽しさとかメンバーの多様性をアピールしたかな。ひとつひとつの写真や、自己紹介の人選にも結構こだわった。 カズヤ:来年はWEBのリニューアルを考えていて、そのためにも再度ブランディングを練りたい。LIPは何を目指していてどんな組織で、なぜマイクロファイナンスなのかをもう一度問い直して、メンバーの向く方向を定義し直したい。 ヒロシ:団体のビジョンとミッションがあって、それをブランディングして多くの人に伝える。それは認知度向上にも確実につながるよね。「働きながら、社会を変える」というモデルを広めるためにも、「マイクロファイナンスと言えばLIP」と言われるためにも、広報グループはより頑張らなきゃだね。 チャレンジや刺激的な仲間との出会いがある コウヘイ:僕たち、今夜は珍しく真面目で熱過ぎない? ふたりの青い炎見えてるし。こたついらない(笑)。 カズヤ:でもね、正直、本業が忙しかったりしてLIPへのやる気ができない時期もあったんだ…。そんなときに、自分より後から入ったメンバーがものすごい成果物を出したりリーダーシップを発揮したりするのを見て、自分も見習わないとと素直に思った。LIPの課題は見つけたのに、それを解決せずに終えてしまってはダメだ、と。それがLIPに居る理由かな。 コウヘイ:流石にコンサルタントをしているだけあるね。つくづく思うけど、ほんと真面目で考えすぎるタイプだよね。 カズヤ:たまに生きるの、つらいっす…(笑) ヒロシ:がんばれー(笑)。僕はモチベーションとか何かをする理由とかあまり考えずに、何となく直感で動いて業務をすることが多いから、カズヤのそういう面は良い刺激になったりもする。LIPの楽しさって、やっぱり色々な人に出会えるところ。特に社会の問題を自分事化できる人とたくさん話せるのは、すごくうれしい。だからLIPを続けてしまう。 カズヤ:僕にとってのLIPの楽しさは、本業ではできないことにチャレンジできるところかな。たとえば、コンサルタントの立場ではプロジェクトのオーナーになることが難しいけれど、LIPでは立候補すればプロジェクトをリードできる。しかも、こういうLIPでの活動がクライアント目線で物事を考えることにつながって、結局、本業にも活きている気がしている。 コウヘイ:なるほどね。僕は正直、会社だけだと飽きるから(笑)LIPに居る面もある。とにかく悩むヒマがあったら手を動かせば?って日々思ってるから、引き続き黙々と手を動かし続けます。もっとLIP内のシステムを改善して、来年は業務の効率化を目指したい。 ヒロシ:コウヘイ兄さん、頼もしい! 有言実行の人だもんね。あ、今度仕事で女性に菓子折りを渡さなくちゃいけないので、おすすめのスイーツも教えて。 カズヤ:僕はデートに使えるバーとレストランを教えてほしい(笑) コウヘイ:もちろんっす!そろそろ赤い炎の話、始めますか。 —この後はご想像にお任せいたします。 こんなメンズたちと仲間になりたい方、活動に興味ある方、LIPでは随時メンバーを募集しております!ご興味ある方は、ぜひこちらからお申込みください。 http://mf.living-in-peace.org/page-931/joinus/   Illustration: Yu Kimura   Text: Kyoko Takahashi

国を追われた人々が直面する課題とは? ~金融包摂と難民問題~

世界中では多くの人が身の危険を理由に、自分の町を離れ、海や国境を越え、新しい土地での生活を余儀なくされている。2016年に紛争や迫害が原因で国内外に強制移動をせざるを得なかった人々の数は、過去70年のうちで最多となる6,560万人を記録した(UNHCR, 2016)。最近のニュースでは、迫害から逃れてミャンマーから隣国バングラデシュへ渡るロヒンギャ民族の人数が、50万人以上に達したことが報道されている(UN, 2017)。 金融包摂やマイクロファイナンスに関する話題は、途上国を中心とした貧困問題に焦点をあてて、取り上げられることが多い。しかし、他国に逃れた難民や紛争状況下に取り残された国内避難民も、適切な金融サービスへのアクセスが大きく制限されていることを忘れてはならない。例えば、人道的危機の影響を受けた国に暮らす人々は、影響を受けていない低所得国に住む人々と比較して、正規に登録された金融機関を利用して貯蓄を行う割合が約3分の1、融資へアクセスできる割合が約2分の1に留まると報告されている(CGAP, 2017)。 難民問題は日本にいると肌で感じることが少なく、実際に難民として生活する人々と接する機会もほとんどない。こうした人々は、どのような状況で生活しているかを知っているだろうか? 今回は、難民と金融包摂に焦点を当て、彼らがどのような財政状況下にあり、金融サービスにアクセスする上で、どんな課題に直面しているかを紹介する。   © MOAS   難民・避難民の経済・生活状況 国内外への退去を余儀なくされた人々は、以下の理由から限りなく脆弱で不安定な経済状況下に置かれる。 自己資産の紛失 まず、紛争や迫害、暴力等、緊急事態から逃れてきた場合、これまで所持していた現金、車、高価な家具や土地などの資産、銀行預金を残し、無一文で避難する場合が多い。ヨルダンへ逃れたシリア難民の中には、数日で帰国できることを信じて、家の鍵だけを持って逃れた人々もいる(Gurdian, 2017)。 ©Andrew McConnell/British Red Cross 既存金融サービスへのアクセスの制限 母国で使用していた銀行預金、送金、保険や融資などの公式な金融サービスに、一時的、もしくは長期的にアクセスできなくなる。クレジットカードや身元証明書類を持ち出してこなかった、もしくは紛失した場合、もともと使用していた口座へすぐにアクセスすることも制限される。  家族、親戚や身内、親しい友人との分離 新しい土地では、時に母国や自分の町で一緒に暮らしていた家族、親戚、親しい友人と、物理的に離れて暮らすことも多い。緊急時に財政面、生活面でこれまで頼っていた人とのつながりが弱くなり、社会的セーフティネットが非常に脆弱な状態になる。離れて暮らす知人への連絡手段や、国や地域をまたぐ送金手段がない場合、知人から生活資金を送ってもらうことも難しい。  社会保障の欠如 異国への退去を強いられた人は、母国で保障されていた基本的な医療や教育、保険サービスへのアクセスを失う。医療や保険に関していえば、難民キャンプや人口密度の高い避難先では、感染症の蔓延リスクが高い上、物理的な安全性が低い状況にもかかわらず、医療や保険へのアクセスが制限されていることを意味する。  不安定な収入と変動の激しい支出 収入や支出を予測することが難しい。難民の主な収入源は、一時的な労働から得た収入、家族や親戚からの不定期な送金、援助機関による不定期の補助金支給であり、不確実性が高い。支出に関しても、避難状況下における突然の病気や頻繁な国内外・キャンプ間の移動などが発生することから、変動が激しい状態になる。   2ページ目に続く…

『最底辺のポートフォリオ』が問い直した、途上国の「貧困と金融」

本コラムの執筆時点である10月上旬。次々と発表されるノーベル賞の各分野の選出が世間を賑わせています。約10年前の2006年には、バングラデシュのマイクロファイナンス機関である「グラミン銀行」と、その創設者であるムハマド・ユヌス氏がノーベル平和賞を受賞しました。 1970年代に米国留学を終えて母国に帰国し、経済学者として教鞭をとっていたユヌス氏は、貧困に苦しみ、高利貸しからお金を借りざるを得ない人々を数多く目の当たりにしました。そして、貧困層の小規模事業に小口の融資をすることを通じて貧困削減を目指す、「マイクロクレジット」の提供を始めました。これは、貧困層のニーズに合わせて貯蓄や保険などのサービスを拡充する「マイクロファイナンス」へと、後に転換していきます。 グラミン銀行の成功もあり、マイクロファイナンスは数多くの途上国に普及していきます。しかし、「貧困層がどのようにお金をやりくりして生活しているのか」ということは、明らかになっていませんでした。その点を画期的な研究手法で分析したのが、今回紹介する『最底辺のポートフォリオ』(みすず書房、原題:Portfolio of the Poor)です。開発経済学者のモーダック氏やマイクロファイナンス機関の創設者であるラザフォード氏らが執筆しました。 彼らの研究手法は、ずばり「貧困層の家計簿を作る」ということです。従来の調査のほとんどは、家計の収入や貧困者数をある時点だけ記録する「スナップショット」のようなもので、一定期間のお金の流れに着目したものはほぼ皆無でした。モーダック氏らは複数国の貧困層の家計簿を収集することを通じて、貧困層の「お金のやり取り」に迫ったのです。その結果、次のようなことが明らかになりました。 第一に、貧困層の収入は低いだけでなくかなり不安定だということです。例えば、開発経済の分野では「1日2ドル以下で生活する人が●億人」という議論がなされますが、「1日2ドル」というのはあくまで一定期間の平均値であり、調査対象世帯の中には2ドルを大きく上回る日もあれば収入が全くない日も珍しくありませんでした。日々の生活をやりくりするだけでなく、災害・病気などの緊急時への対応にも迫られるという貧困層の直面する問題が、明らかになったのです。 更に、貧困層は様々な「金融ツール」を使うことで日々の生活をやりくりしていることも、調査から分かってきました。図表はある調査世帯のバランスシートですが、資産・負債にはマイクロファイナンス・ローンだけでなく様々な項目が並んでいることが分かります。リスクレベルの異なる「金融ツール」が、調査対象世帯では平均9つも利用されていました。貧困層の「お金のやり取り」は想像していたよりも単純ではなかったのです。 貧困層のバランスシートを仔細に見ると、マイクロクレジット以外にも家族・友人や高利貸しなど、様々な「インフォーマル」な手段を貧困層が利用していることも分かってきます。銀行などのフォーマルな金融へのアクセスがない貧困層にとって、より信頼できる「セミフォーマル」な金融サービスを提供するマイクロクレジットの登場は非常に画期的でした。しかし、インドや南アフリカなどではマイクロクレジットの利用はそこまで進まず、むしろ家族や友人から借り入れをしたり、年率数百%という一見不合理に思える高利貸しを利用したりする貧困層は少なくありませんでした。 図表:バングラデシュのある調査世帯のバランスシート (注1)実家への送金は、返済の義務が生じるケースや送金側の使用する資産の形成に利用されるケースが多いため、資産として扱っている。 (注2)マネーガードは、後日ある目的で使うまでお金を取っておきたいという人が家族・友人などにお金を預ける仕組みである。 (出所)モーダック・ラザフォードほか(2011)より作成 では、マイクロクレジットの利用が思ったほど進まなかったのは何故なのでしょうか。モーダック氏らは、貧困層が主に金融サービスに「柔軟性」「利便性」「信頼性」を求めるなか、従来のマイクロクレジットには「柔軟性」が欠けていたのではないか、ということを理由に挙げます。毎週のミーティングに時間通りにローンオフィサーが来て正確な額のお金を貸してくれるし、高利貸しよりも低利であるということから、マイクロファイナンスには「信頼性」がある。その一方で、「毎週一定額の返済や貯蓄が求められること」など、「柔軟性」が欠けたサービスであることを、彼らは指摘するのです。さらに、貧困層の金銭の管理の難しさは収入の少なさよりも、「得られるタイミングが極めて不確実である」ことから、「信頼性」は低いが「柔軟性」は高いインフォーマルな金融手段に依存せざるを得ないのではないかとも、本書で示します。 著者らは、グラミン銀行を始めとしたマイクロファイナンス機関が、従来のマイクロクレジットから保険・貯蓄など様々な金融サービスを提供するようになったことを評価はしています。しかし、途上国の貧困層の「お金のやりとり」を明らかにすることによって、「貧困層のキャッシュフローの現実に即したサービス」をもっと提供すべきだと主張しています。このように、「顧客本位のマイクロファイナンス」のために何が必要であるかを画期的な調査を説得材料に説いたという点が、『最底辺のポートフォリオ』が開発学の必読書として評価される所以でしょう。バナジー&デュフロの『貧乏人の経済学』、カーラン&アペルの『善意で貧困はなくせるのか?』と合わせて、「開発経済学の三部作」とも呼ばれています。 さて、最後に宣伝ですが、『最底辺のポートフォリオ』の著者の一人であるスチュワート・ラザフォード氏が10月22日(衆議院選挙の投票日!)の「マイクロファイナンスフォーラム」に登壇します。ラザフォード氏は研究者として目覚ましい業績があるのに加え、バングラデシュのマイクロファイナンス機関「セーフセーブ」の創設者でもあります。『最底辺のポートフォリオ』や貧困層が直面する金融の問題についてご興味のお持ちの方は、ぜひご参加ください! (調査グループ:森)   <10周年記念特別フォーラムのご案内> 〜世界の貧困削減に向けて〜 これからのマイクロファイナンスを語ろう! 日時:2017年10月22日(日) 12:45~16:30 (12:15開場) 場所:一橋講堂 アクセス: 東京メトロ半蔵門線、 都営三田線、 都営新宿線 神保町駅(A8 ・ A9 出口)徒歩 4 分 東京メトロ東西線 竹橋駅 (1b 出口) 徒歩 4 分 参加費:一般 3,000円 学生 1,000円 ※同時通訳機付きは、別途500円かかります フォーラムの詳細とお申し込みはこちら  

国税庁認定から都庁認定への切替手続が完了しました

国税庁認定から都庁認定への切替手続が完了しました March 21, 2017 Living in Peaceは、2017年3月15日付けで東京都より特定非営利活動促進法第44条第1項の認定を受けたことをご報告いたします。 当法人は、旧認定制度に基づき国税庁長官による認定を受けておりましたが、2017年7月15日に当該認定の有効期間が満了することに伴い、この度、新たに認定取得手続を行いました。 2012年4月1日に施行された「特定非営利活動促進法の一部を改正する法律」による新制度では、所轄庁が国税庁から東京都へと変更されたため、この度の認定は東京都による新規の認定となります。 認定の有効期間は2022年3月14日までの5年間(2017年3月15日から同年7月15日までの間は国税庁及び東京都の認定が併存)となります。 この度の新規認定により、寄付者のみなさまにおかれましては、旧制度に基づく認定有効期間満了後も引き続き同様の税制優遇制度をご利用頂けます。 今後も「機会の平等を通じた貧困削減」に向けて邁進して参りますので、引き続きご支援のほどよろしくお願いいたします。 【都庁の認定NPO情報】 http://www.npo.metro.tokyo.jp/ 【税制優遇措置】 http://www.kodomo.living-in-peace.org/tax-deductibility/

アフリカの事例から考える携帯電話とマイクロファイナンス

     ある農村に、明日の食べることにも苦労する女性がいた。彼女は銀行に行ったこともお金を借りたこともない。ある日、彼女はマイクロファイナンス機関のローンオフィサーに出会う。お金を融資してもらい、小規模な事業を始める。月に何度も訪ねてくるローンオフィサーから直接金融教育や経営指導も受け、事業は軌道に乗り、彼女の生活は劇的に変わった―――。 というのが、マイクロファイナンスのよくあるストーリーだ。今、このストーリーがアフリカでは変わろうとしている。    発端は、携帯電話の普及だ。未だに飢餓で苦しむ人が多いアフリカで携帯電話? と、意外に思う人もいるかもしれない。ところが、アフリカでは電気のないような田舎にも携帯電話が普及しているのだ。たとえば、ケニアでの普及率は9割に近い [1]。主な理由としては、携帯電話が安価になったことと、携帯電話会社がプリペイド式を一般化し料金を下げたことが挙げられる。ちなみに、電気のない村で充電はどうするのかというと、発電機や太陽電池を使う。 インフラの不整備と人口密度の低さ。ふたつの課題を携帯電話が解決    アフリカは、マイクロファイナンス機関の浸透率がラテンアメリカやアジアに比べて低かった[2]。その主な要因はインフラ整備の遅れと人口密度の低さだ。マイクロファイナンス機関は「高コスト低リターンの薄利多売」の事業をしているので、運営コストを賄う為には一つの支店が受け持つ顧客数を増やす必要がある。しかし東アフリカは都心部を除くと、一つの村から近隣の村までが遠く、広大な土地にポツポツと村が点在しているような状況だ。マイクロファイナンス機関のスタッフが各顧客とコミュニケーションを取るために訪問していては、移動コストが嵩む。さらに、村から村への移動の道路が整っていない為に、移動手段用に車両を購入しなければいけないなど、運営コストを圧迫する。    そこで、マイクロファイナンス機関は通信会社とタッグを組み、携帯電話を使って送金するサービスを開始した。ケニアでは大ヒットとなり、成人人口の3割が利用している[3]。なお、ここでいう携帯電話とは、iPhoneのような高価なスマホではなく、メッセージだけが送れる一昔前の機械を指す。送金はメッセージを打つだけでできるから、どんな携帯電話でも対応可能なのだ。この送金サービスを応用し、マイクロファイナンス機関は移動コストを削減しながら、顧客を確実に増やしている。    さらに、融資だけではなく他の金融商品の提供も始めている。ある機関は、融資する際に必要となる信用情報を携帯電話の支払い状況から把握し融資額を決めたり、干ばつや洪水に苦しむ農家には保険サービスも提供したりしている[4]。 携帯電話は本当にマイクロファイナンスの有効ツールなのか?  携帯電話によって、マイクロファイナンスには明るい未来が約束されたのか。ここで、ひとつ懸念するのは、マイクロファイナンスとは人と人が繋がって成立するpeople’s businessであるという点だ。担保などを持たない貧困層を顧客対象とするマイクロファイナンスは、顧客との信頼関係の度合いが返済率へ大きく影響する。携帯電話ばかりに頼っていると、その返済率が悪化するかもしれない。もちろん、対面というアナログのコミュニケーションが善でデジタルのコミュニケーションが悪、という単純な話ではない。しかし、営業経験のある人ならわかるかもしれないが、電話だけで営業をするよりも直接会って話をした方が顧客と信頼関係を築けることは多いのではないだろうか。    一方で、機関は携帯電話というテクノロジーを業務効率化やコスト削減のために使い、その分で生まれたリソースをさらなる貧困層への顧客拡大や新しい金融商品の開発等に活用することができる。携帯電話を単なるコミュニケーションツールではなく、新たなテクノロジーとして日常業務に取り入れることにより、マイクロファイナンスの可能性を広げられるのだ。この点では、携帯電話により、マイクロファイナンスは飛躍的に進化し得ると言える。   アフリカでよく目にする風景のひとつが、この携帯充電ステーション。   Text & Photos/Koji Arisawa   【参照】 [1] Kenya’s mobile penetration hits 88 per cent, http://www.ca.go.ke/index.php/what-we-do/94-news/366-kenya-s-mobile-penetration-hits-88-per-cent [2] Page 11, Figure 1.1: Account penetration, http://documents.worldbank.org/curated/en/187761468179367706/pdf/WPS7255.pdf#page=3 [3] Page 41, http://documents.worldbank.org/curated/en/187761468179367706/pdf/WPS7255.pdf#page=3 [4] How M-Shwari Works: The Story so far, http://www.cgap.org/publications/how-m-shwari-works-story-so-far

〜2016年もプチ漫画付きでナビゲート!〜 保健医療をテーマにマイクロファイナンスフォーラムを開催!

—登場人物紹介— <左> オオノ 調査グループ。今をときめく外資系コンサル勤務の働きマン。論理的思考能力の高さやコンサルインテリ用語で他メンバーを圧倒する。 <中> テジュン 我らがLIP代表。本業で世界を駆け回るジェットセッターでありランナー。好きな食べ物は参鶏湯と焼肉、コンビニスイーツ。 <右> キョウ 入会1年以上を経過し、新米キャラはどこえやら。テキパキした仕事ぶりでメンバーの尻を叩く存在に!料理を作るのも早い。 今年もテーマがマニアック!? 2016年度のマイクロファイナンスフォーラムのテーマは、「マイクロファイナンスと保健医療」。昨年に引き続き、広報チーム・キョウのナビで見どころをリポートします! マイクロファイナンスと保健医療はどうつながる?   —ある週末の夜、キョウ宅にて。   キョウ:ちょっとオオノさん、早くしましょうよ! オオノ:え、何のこと? もうキョウさんが作った料理なら全部食べたよ。美味しかったー。 キョウ:違いますよ! 今年のフォーラムのテーマです。早く考えないと! オオノ:それね。実は私の頭のなかでは結構固まってきてるんだ。もうイシューは明確だし、今週中には何らかのアウトプットを出すつもりだったんだけどリソース不足で。 キョウ:(出た、外資コンサル用語・・・)今、この場でしちゃいましょう! オオノ:実は、マイクロファイナンスと保健医療の関係が気になっている。ベトナムでマイクロファナンス機関や顧客に話を聞いたら、機関から支援を受けていざ生活を立て直そうとしても、体調を崩して働けなくなり、お金が返せない…という顧客が多い印象をもったんだ。マイクロファイナンスをきっかけに、改めて健康の大切さを思い知った、という感じかな。 キョウ:なるほどー。でも、“金貸し”と”健康管理”ってなんか遠いような気がするんですけれど。 オオノ:日本の金融機関を想像すると確かにね。でも、たとえばマイクロファイナンスのひとつの特徴として、センターミーティングがある。顧客が機関にお金を返す場であるとともに、読み書きを教えたりと教育の場として活用されているのは知っているよね? このセンターミーティングの場で、保健教育をしているマイクロファイナンス機関もあるんだ。それに、マイクロファイナンスというと、まず融資を考えがちだけれど、貯金や医療保険のサービスも提供しているし。 キョウ:”保健”と”保険“。実はダブルに絡み合っているわけですね。 オオノ:そうそう。そして、実際に顧客の医療ケアに携わっている人たちは、保健教育や保険サービスをどう捉えているのかが、非常に気になるところ。今回のフォーラムでは、医師など、医療関係者の方々を招いて進めたいと思っている。貧困問題は、健康問題の解決なくしては改善しない! キョウ:オオノさん、素敵!!!私、ついて行きます!!!今すぐ何かしたいです!!!夜食に作った参鶏湯、食べてください。きっとオオノさんの健康にいいですよー。 オオノ:確かに、私たち自身の健康管理も大切だよね。いただき・・・ テジュン:その参鶏湯、僕がほしいです。 キョウ&オオノさん:テジュンさん、いつの間に!? テジュン:空港から走ってきましたー。     医療問題の解決には国レベルの政策も求められる   テジュン:ところで、オオノさんの説明には大体同意です。保健医療や及び保険サービスの改善は大切。そして、同時に課題や限界も感じている。 オオノ:テジュンさんの現場の話も聞きたいです! テジュン:たとえば、アプリを作って、健康診断を気軽に受けられるようにしたケースがある。でも、実際は、健康診断を受けるマイクロファイナンス顧客の数はあまり増えなかった。1日仕事を休んで病院に行くことに、あまり重要性を感じない…合理的な意思決定として、検査を受けることを選ばない人が多いんだ。保健医療問題の解決には、もっとドラスティックなチェンジが必要なのかもしれない。 キョウ:民間、NPO/NGOレベルの保健教育や保険サービスだけだと追いつかないというわけですね。 テジュン:そう。国など、大きなレベルでのインフラや制度面の改善が求められていると思う。そこで、僕はフォーラムでは、日本の国民皆保険制度についても触れたい。すべての国民が何らかの公的医療保険に加入し、お互いの医療費を支え合うという国レベルの制度は、貧しい人の健康ケアという点で成功例。途上国の健康医療問題を考えるうえで、ヒントが多いと思うんだ。マイクロファイナンス機関として何ができるのかも探りたい。 キョウ:なるほどー。でも、国の政策レベルの話に、マイクロファイナンス機関って関与できるんでしょうか。 テジュン:国の政策は、市民レベルの働きもあって動くものではないかな? オオノ:マイクロファイナンス機関が、世界の健康医療問題を動かすトリガーに! キョウ:世界を変えるには、”お上に任せておく“のではなく、民の働きかけが必要ってわけですね! テジュン:その通り!そして、民の集まりであるNPOは、”ソーシャルな部分のアジェンダ設定組織”であるべきだと思っている。マイクロファイナンスフォーラムを続けてるうえでいちばん意識しているのは、あまりスポットライトが当たっていない問題を国や世の中に提起すること。時代の一歩先を進んでいきたい。今年の「マイクロファイナンスと保健医療」も、ほどほどに時代の先を読んだ良いテーマなのではないかな? あ、時間がない。そろそろまた走って次の打ち合わせに行かないと… (テジュン、走り去る) オオノ:テジュンさん、話に夢中になって参鶏湯を忘れてる! キョウ:えー! 私、追いかけてきます!…… だめだ、ランナー・テジュンの足は早すぎて追いつかない。一歩が大きすぎです!!! THE END   マイクロファイナンスフォーラム2016の詳細・お申し込みはこちら →http://peatix.com/event/201591/view

LIPメンバーと一緒に旅しませんか?参加者募集中! カンボジアスタディツアー開催

LIPメンバーと一緒に旅しませんか?参加者募集中! カンボジアスタディツアー開催 少し早いですが、夏休みの予定はお決まりですか? どこかを旅したいけれど、楽しいだけでは物足りない。現地の人と交流して、ツーリストではなくトラベラーとして過ごしたい。そんな人に注目していただきたいのが、LIPがH.I.Sと共同で企画するスタディツアーです。今年は8月20日(土)-24日(水)の4泊5日の日程で、カンボジア・プノンペンへ。マイクロファイナンス機関SAMIC(サミック)のオフィスとその顧客を訪ねます。 ここでは、LIPが考えるスタディツアーの魅力をまとめます。少しでも興味がある方は、ご一読ください! 1. マイクロファイナンスのありのままの現場へGO! ツアーでは、マイクロファイナンス機関SAMICを訪問し現地スタッフと交流するのに加えて、顧客(借り手)を訪ねる予定。日々どんな生活をしているのかや、お金を借りてどのような事業を行っているのかなど、顧客の話を聞くことができます。また、都心と農村部の両方を訪れる予定ですので、カンボジア国内の地域格差などを自分の目で確かめることも可能です。 「想像していたのと同じ風景だった」、あるいは逆に「覚悟していたほど貧困に苦しんでいる様子ではなかった」など、色々な感想をもつことでしょう。どんな経験もマイクロファイナンスを考え直すよい刺激になり、世界の問題をまたひとつ”自分ごと化“できるはずです。加えて、きっと、現地スタッフや顧客たちの一生懸命な姿に、こちらの方が励まされるほど前向きな力をもらえます。 2. お馴染みの観光地も新たな視点で楽しめる 2日目には、キリングフィールドやトゥルースレン、王宮などプノンペンの代表的な観光地を巡る予定です。訪れる場所は定番ですが、少々いつもと違う体験ができるのがスタディツアーの醍醐味。アイスブレイクも兼ねて観光するごとに感想を言い合う時間があるので、大人の修学旅行さながらに意見交換で盛り上がるのです。 実際、過去の参加者からは、「ガイドブックを読むのとは違う学びや視点が得られた」、「自分だけでは見えないものが、見えてきた」という声が上がっています。 風景の記憶とは、「建物がどんな形をしているか」という物理的な要素に加えて、「建物を誰とどんな気持ちで見たか」という自分がいた状況も一緒に定着されるもの。年齢も職業もさまざまなメンバーで楽しむスタディーツアーならではの、豊かな観光体験を心に刻んでください! 3.「社会を変える!」交流ができる。仲間ができる マイクロファイナンスを共通項に、参加者の親交があっという間に深まるのがスタディツアーの楽しいところ。マイクロファイナンスの貧困削減効果を中心に話が盛り上がって止まらなくなり、ホテルに戻って夜な夜な参加者同士で議論する…というシーンも過去にはありました。LIPのメンバーも数人参加予定です。 すべての人にチャンスがある世界を目指して、ぜひ仲間になりましょう!   【過去のスタディツアー記事はこちらから】 http://mf.living-in-peace.org/blog/2016/04/29/ベトナムスタディツアー2015-9レポート/ http://mf.living-in-peace.org/blog/2016/04/29/h-i-s-担当者に聞きました!-貧困削減への確かな一/   お申込み方法等の詳細は下記をご覧ください。LIP 一同、みなさまの参加を心待ちにしております! ——————————————- 【ツアー概要】 訪問地:プノンペン(カンボジア) 日程:2016/08/20(土) ~ 2016/08/24(水)の4泊5日間 旅行代金:159,000円 ~189,000円 ※早割 6/20(月)までのお申込で1万円引き 内容:サミックのオフィス訪問、融資先の事業視察、現地スタッフや顧客との交流ランチ等 詳細・お申込はこちら: http://eco.his-j.com/volunteer/tour/TF-HAN0001 ※8月は混み合う時期ですので、航空券がキャンセル待ちになる場合がございます。お早めにお申し込みください。    

マイクロファイナンスは貧困削減に効果があるのか? ~2015年時点の最新情報~

マイクロファイナンスは「負け組」をつくるのか?~Compartamos Bancoの事例~ 貧困削減をミッションとしているLiving in Peace (LIP)として、マイクロファイナンスに貧困削減効果があるか否か、は極めて重要なテーマです。 現に「マイクロファイナンスは低所得者層に年率100%以上の高金利でお金を貸出す、途上国の消費者金融のような存在ではないか」という懸念の声も一部あります。確かに、マイクロファイナンスの金利は低くありません。しかし、本当にマイクロファイナンスは低所得者層から高金利で搾取し、不幸をまき散らす存在なのでしょうか。その点を可能な限り統計的に分析した論文を紹介します。 “Win Some Lose Some? Evidence from a Randomized Microcredit Program Placement Experiment by Compartamos Banco(マイクロファイナンスは勝ち組と負け組を作るのか。Compartamos Bancoのランダム化比較試験からわかったこと)” メキシコで最大のマイクロファイナンス機関であるCompartamos Bancoを巻き込んだプロジェクトです。手法をざっくり説明すると ランダムにマイクロファイナンスの潜在的顧客(借りる意志・能力がある人達)といえる女性の事業主・または女性で事業を始めようとしている人を選び(16560人)、初期データを取る(ベースライン調査) 選んだ女性達を2つのグループにわける 【Treatment(介入有)グループ】 こちらのグループにはマイクロファイナンスへのアクセスを与える。具体的にはTreatmentの地域にはCompartamos Bancoから訪問・広告などのマイクロファイナンスローンのプロモーション活動を積極的に行う) 【Control(介入無)グループ】 こちらのグループには比較対象にするため何もしない。 2~3年後に対象家庭のデータを再度取り(フォローアップ調査)、生活の変化をみる という方法でマイクロファイナンスへのアクセスの有無が与える影響を特定しています。 結論としては、マイクロファイナンスへのアクセスは、ビジネスの拡大、家計の管理能力、幸福度、人への信頼度、金銭的意思決定における発言権など主に定性的な(数値化しづらい)面ではポジティブな効果が統計的に有意に存在すると観察されました。 ※「統計的に有意」とは「確率的に偶然とは言えなさそう」と置き換えて考えてください 例えばビジネス(事業)の拡大に関しては Treatmentグループはビジネス(事業)での2週間の収入が121ドル(Controlグループより+27%)、支出が118ドル(Controlグループより+36%)統計的に有意な増加が観察された しかし、利益(収入-支出)の額に関しては統計的に有意な結果は観察できなかった。具体的には、Treatmentグループの方がControlグループよりも利益が0.2ドル少なかったが、これは各々の利益の分布からいっておそらく偶然である つまり「利益は増えていないが扱う額は増加した」結果、事業は拡大した という論理です。 家計の管理能力、幸福度、人への信頼度、金銭的意思決定における発言権などの定性的な面での向上がみられたのは、マイクロファイナンスにより扱う金額が増大した→企業規模が大きくなった→社会的責任感が増した、というフローの結果と考えられます。 一方でビジネスの利益、日用品への出費額、教育・医療への出費額、など主に定量的な影響について統計的に有意な結果は観察されませんでした(=TreatmentとControlで増減に差はあるものの、偶然の可能性を否定できない)。 更に、この調査で注目していた全17指標において、TreatmentグループはControlグループと比較した際に統計的に有意なマイナスの影響は観察されませんでした。 以上の結果から、「マイクロファイナンスは2~3年で収入が増加するなど定量的な効果があるとは必ずしも言えないが、人への信頼が高まるなど定性的な面では効果が確認できた。加えて、少なくともマイクロファイナンスの存在で統計的に有意なマイナスの影響はない」と言えます。この調査では「マイクロファイナンスへのアクセスの有無」がTreatmentとControlの差なので、万が一「マイクロファイナンスへのアクセスがあったせいで不利をこうむった」ことがあれば、「マイクロファイナンスが負け組を作った」と言えたと思います。しかし今回の調査結果では偶然でなさそうなマイナスの影響は殆ど観察されなかった為「負け組は作らなかった」と言えると思います。 グラミン銀行のムハマド・ユヌス氏がノーベル平和賞を受賞したこともあり、「マイクロファイナンスは、収入も生活レベルも精神衛生も向上させられる魔法のようなシステム」という印象があるかもしれません。しかし現実としてはマイクロファイナンスの登場で突然地域の経済レベルがあがり、金銭的に豊かになるとは限らない、というのがこの論文の主張です。しかしながら重要なことは「少なくともマイクロファイナンスの登場で悪影響を及ぼす可能性は低い」と「定性的(数値化しづらい)ファクターで良い影響を及ぼしたのは偶然ではなさそう」の2つの事実です。マイクロファイナンスは新しい金融システムの為、まだまだその効果について議論の余地がありますが、こうした論文の結果は、マイクロファイナンスを広げる一つの強い客観的根拠になり得ると思います。 LIPとしても、今後もマイクロファイナンスに貧困削減効果があるのか、またその程度、条件などの詳細について、調査を続けたいと思います。 (西田一平)  

H.I.S.担当者に聞きました! 貧困削減への確かな一歩となる、ベトナムスタディーツアーの魅力とは?

マイクロファイナンス機関や顧客(借り手)を訪ねる、「マイクロファイナンス スタディツアー」。貧困削減の現場を自分の目で見ることで最高の学びが得られるとして、毎年多くの方から好評いただいています。 今年は9月のシルバーウィークに実施し、ベトナムのマイクロファイナンス機関「TYM」を視察予定。ここでは、企画者であり2013年度のツアーに同行したH.I.S.の鮫島卓さんにその魅力を語っていただきます。果たしてどんなスペシャルな体験ができるのでしょうか。 ”大人の修学旅行”のノリで楽しむから、定番の観光地も新鮮にうつる ↑ H.I.S.エコ・スタディツアーデスク所長の鮫島卓さん。「ひとり参加が多く、皆さん最初は緊張している様子ですが、あっという間に熱い議論になるほど仲良くなる。それがスタディツアーの醍醐味です」と笑う。   LIP ツアー初日はハノイの市内観光をする予定です。まずは、街の魅力や観光ポイントを教えてください。(※市内観光は5日間プランの方のみです) 鮫島卓さん(以下、敬称略)ハノイの街は人が溢れバイクのクラクションが鳴り響き、喧騒と活気で満ちています。そんななか、他のアジアの国とは違ったフランス統治時代の情緒や文化を感じられるのが魅力です。  観光スポットとして注目いただきたいのが、ホー・チ・ミン廟。ホー・チ・ミンの遺体が安置されている場所で、市街の喧騒とは別世界のピンと張りつめた独特の空気感があり、ベトナムが社会主義の国だということを改めて実感します。   ――観光ではわりと定番の所を訪れると思いますが、ハノイのリピーターでも楽しめますか? 鮫島 間違いなく楽しめます!スタディツアーでは、アイスブレイクも兼ねて、観光するごとに感想を言い合う時間を作りました。「ハノイ大教会のこんなところが素晴らしかった」などをみなで話すことで、ガイドブックを読むのとは違う学びや視点が得られる。「自分だけでは見えないものが、見えてきた」と興奮する方もいたぐらいです。参加者の年齢や経歴がさまざまなのも、多様な意見が生まれて面白い。大人の修学旅行のノリで、通常の観光とは違った刺激を受けられると思います。 ↑ ハノイ市内は、道路を渡るのが一苦労なほどバイクが溢れて。その活気に、この国が急成長している様子が感じられる。   ――マイクロファイナンス機関の視察では、今年もTYMを訪れる予定です。ベトナムの貧困やマイクロファイナンスの現状について説明を受けるなど、現地スタッフと交流しますが、参加者の反応はいかがでしたか? 鮫島 投資をしている参加者の方からは、「自分のお金がどのように使われているのか具体的にイメージできて、よりマイクロファイナンスに親近感がわいた」という意見をいただきました。同時に、「本当に貧困の解決になっているのか?」「もっとも貧しい人の役に立っているのか?」「融資の基準は妥当なのか」など、現地スタッフに鋭い質問を投げる方も多かったです。 マイクロファイナンスの貧困削減効果を中心に話が盛り上がって止まらなくなり、ホテルに戻って夜な夜な参加者同士で議論する…というシーンもありました。参加者はほぼ全員がひとり参加だったのですが、マイクロファイナンスを共通項にあっという間に親交を深めていましたね。本当に熱い熱い夜でした(笑)。   顧客の朝ごはんのメニューからセンターミーティングまで、ありのままを視察 ↑ TYMからお金を借りて、バイクの修理事業などで生計を立てる女性を訪問。事業は成功し、支援から卒業しつつある。   ――そしていよいよツアーのハイライト。顧客(借り手)を訪ねます。TYMは“女性のための女性のマイクロファイナンス機関”というのが大きな特徴で、ツアーで話を聞くのも女性の顧客です。 鮫島 前回のツアーでは、ふたりの女性顧客の家庭を訪問しました。「何時に起きてどんなご飯を食べているのか」など、日常生活のことを具体的に質問できるのがよかった、と参加者の方から感想がありました。 ふたりのうち、ひとりはバイクの修理などの事業を興して成功し、支援を卒業しようとしている女性。もうひとりは、夫が亡くなって小さな子どもを抱えながら養鶏の仕事を始めたばかりで、貧困状況にある女性でした。同じ機関の顧客でも、家庭の状況や事業の成功具合は実に様々で差があることが実感できたようです。そしてそもそも、首都ハノイと顧客が多く住む農村地帯の貧富の差に驚かれる方も多かったですね。   ――30~40人の顧客を集めて、貸付・返済の確認をすると共にビジネスや金融知識のトレーニングを行う「センターミーティング」を視察できるのも、貴重な体験ですよね。 鮫島 スタッフと顧客が顔と顔を突き合わせてお金の貸し借りをするのですが、その様子が特に金融関係の参加者の方には衝撃だったようです。「マイクロファイナンス成功のカギは、やはりface to faceのコミュニケーションにあると思う!」って興奮されていました。顧客と直接触れ合うことで、事業が本当にうまくいっているのか、健康や精神状態に問題はないか等をきちんと把握できることに、気づかされたようです。 また、デジタル化などで、日本を含む先進国の金融には失われつつある「人と人との温もり」みたいなものの大切さを再認識したという方もいました。   ――最終日の夜も、きっと議論で盛り上がったのでしょうね。 鮫島 かなり盛り上がりました。そして最終日の夜には終わらず、実は帰国後も議論は続いています。何回か有志で交流会が開かれ、マイクロファイナンス談義がベトナムツアー中と同じくらい熱く盛り上がりました。同じ興味をもつ方が集まるので、いい仲間作りになるのもスタディツアーの醍醐味かもしれません。旅が終わっても、旅の楽しみは続きます! ↑ ツアー参加者がもっとも感動したひとつが、集金確認のシーン。日本の銀行とは異なるどこか長閑な様子には、先進国が失った何かをも感じさせる。   ※こちらは2013年度のベトナムスタディーツアーの様子を取材したものです。本年度のツアーは、一部内容などに変更がある場合もございます。