私たちがMFファンドに取り組む意義

今後のマイクロファイナンス機関に対する投資拡大のための呼び水となること、それが、このプロジェクトの意義です。   様々な学びの機会の提供 私たちは、今回のプロジェクトを行うなかで、フィリピン最大のマイクロファイナンス金融機関であるCARDと業務提携を結びました。今後、CARDの研修施設等を利用したトレーニングプログラムを準備します。 同様に、カンボジアの現地マイクロファイナンス機関とも業務提携を結び、現地スタディツアーその他、さまざまな学びの機会をコミュニティメンバーの方々に提供する予定です。 このプロジェクトに投資家やサポーターとして参加してくださった皆様が、現地での様々な学びの機会に接することにより、今後のマイクロファイナンス機関への投資を拡大するための、人的基盤を徐々に築きあげていくと考えています。日本初であること今回のファンド・プロジェクトは、さほど大きな規模のものではありません。 そのため、カンボジアへの移動費などだけを考えても、多くの費用がかかってしまい、結果、本来より投資リターンが低くなっています。 それでも私たちは、このファンドは非常に価値あるものになると確信しています。 私たちの取り組みが成功すれば、少しずつ投資実績が積み上がり、日本からマイクロファイナンス機関への投資の機会が拡がっていくと期待しているからです。 今回、私たちが企画・情報提供しているマイクロファイナンスファンドは、カンボジアにあるマイクロファイナンス機関CHCの資金調達を支援するものです。下記では、私たちが、なぜカンボジアに投資をすることにしたのか、なぜCHCなのかについてご説明させていただきます。   カンボジアを対象とする理由   経済成長の可能性の高さ ▼周辺国との経済ギャップ 世界銀行の2007年の資料によると、カンボジアにおける一人当たりの所得は約650ドルで、これは周辺国に比べて低くなっています。 一人当たり所得が小さなカンボジアにおいては、私たちがファンドを通じて送るお金がより多くの人に新しい機会を提供することができます。 また、カンボジアではタイやベトナムなどの周辺国との交易も盛んに行われているため、 中長期的には周辺国と同じ程度に経済が成長する力があと私たちは考えています。 ▼親の教育意欲の高さ カンボジアにおける学校普及率はまだ高いとは言えません。 しかし、草の根レベルでの親の教育意欲は決して低くないと私たちは考えています。 カンボジアの各地で見ることができるのは、小さな塾です。 村の中でホワイトボードにペンを片手に勉強を教える先生と、小さな頭を寄せ合いながら勉強する子どもたちの姿を、多くの場所で見ることできます。 平均的な所得が決して高いとはいえない国で塾が成立するような国は、 かならず長期的に成長すると私たちは考えています。   マイクロファイナンス市場の成長性 ▼潜在的な成長可能性の高さ 2008年末において、カンボジアの人口1300万人強に対して、 金融機関から借入を受けている人は70万人にも達していません。 マイクロファイナンス機関利用者はそのうち50万人弱と言われていますが、 まだ飽和段階には遠い状況です。このことから私たちは、今後も市場は順調に成長していくと考えています。 ▼規制の水準の高さ 王政下でマイクロファイナンスを推進する活動が進められてきたカンボジアのマイクロファイナンス規制の水準の高さは、 開発途上国の中でもトップクラスにあります。認可を受けたマイクロファイナンス金融機関が18しかないことは、 この規制水準の高さ・厳格さに一因があります。   アジア大陸にあり、日本と関わりも深いこと 私たちの数度にわたる現地視察や投資家のスタディツアー等の実施を考慮すると、 地理的に近いことは、重要なポイントになります。カンボジアは東南アジアに位置し、 直通便はないものの日本から比較的楽にいける国の一つです。 また、カンボジアを支援する人々が日本に多く、そのために比較的知名度が高いのも特徴的です。 印税やセミナーによる収入をカンボジア支援に充てているワタミの渡邉美樹社長、 学校を作るプロジェクトを行っている「行列のできる法律相談所(テレビ番組)」、 児童買春を防止するためのNPOである「かものはしプロジェクト」など、さまざまな人、 団体がカンボジア支援のためにお金と労力を割いています。   CARDという強力な先達の存在 私たちは、今回のプロジェクトを進めるにあたり、私たちの知識と経験をより強固なものとすること、 最前線の情報を手に入れることなどを目的として、フィリピン最大のマイクロファイナンス金融機関である、 CARDと業務提携契約を結びました。 CARDの現地駐在員は、私たちの心強い水先案内人となってくれています。   CHCを対象とする理由 設立の経緯から貫徹されているビジョンが明確であること 私たちがまず重視したのは、マイクロファイナンス機関の有しているビジョンです。 明確なビジョンは、事業の全体的な効率を高めるだけではなく、企業が苦しい時期を耐え抜く力を与えてくれます。 CHC(Cambodian Health Committee Limited)は、 結核やHIV/AIDSの蔓延を防ぐことを目的としたCHC NGO(1994年設立)をルーツとしています。 公衆衛生・開発セクターにおける活動に25年以上従事してきたSok Thim氏が、 保健事業の重要性と同様に資金面のサポートが貧困層の削減に寄与するという信条から開始したマイクロクレジット事業が、 そのはじまりとなっています。 もちろん、ビジョンがただあるだけでは十分ではありません。 ビジョンは、その組織で働く人の中に体現されてこそ、はじめて意味を持ちます。 私たちは、数度のカンボジア訪問を通じて、 このビジョンが経営陣や管理職の間で確かに共有されていることを感じることができました。   成長途上のマイクロファイナンス金融機関であること 私たちが重視している点の一つは、規模の小さいマイクロファイナンス機関を選ぶということでした。 世界的にマイクロファイナンス機関への投資が進むなか、知名度の高い大規模な金融機関が多額の資金調達を好条件でできるのに対し 、新興マイクロファイナンス機関は資金難に悩まされやすいという現状があるためです。 今回のパートナーであるCHCは、カンボジアの18ある認定マイクロファイナンス金融機関のなかでも中程度のランクにある金融機関です。 そのため、日本からの数千万円の投資も、大きな力となりえます。   現地スタッフの魅力 「金融機関の資産は人である」とよくいわれます。 システムや設備などが模倣可能であるのに対し、従業員の質の模倣は容易でないためです。 私たちは現地のフィールドスタディを通じて多くの現地スタッフに接してきました。 一人一人が、しっかりとしたトレーニングを積み、かつ貧困を削減するための使命感を有していました。 対外的にはそう目立たない従業員一人一人の能力とモチベーションは、組織の強さに決定的な違いをもたらします。   CARDの投資・提携先であること さらに私たちのCHCへの信頼を担保しているのは、私たちと業務提携を結んだCARDの存在です。 フィリピン最大のマイクロファイナンス機関であるCARDはCHCと資本関係を有しているだけではなく、 現地にスタッフを派遣し、人的・技術的なサポートも行っています。 これは、初めての取り組みを成功させるために不可欠な信頼の基盤を提供するとともに、CHCのオペレーションの質の高さを保証すると、私たちは考えています。 * 第2種金融商品取引業者の登録のないLIPは、金融商品の勧誘、募集等の行為は一切行っておりません。マイクロファイナンスファンドにつきましては、提携先のミュージックセキュリティーズ社にお問合せください ※この記事は、旧LIPサイトから引き継いだ記事で、書かれている内容は必ずしも最新の状況を反映しておりません

MFIの資金調達

さて、28日のフォーラムでは、スタンダードチャータードのプレゼンもありますが、昨今の欧米におけるマイクロファイナンス投資を理解するためには、MFIsの資金調達の仕組みを理解することが不可欠です。 前回、商業化するMFIsの業態転換の流れをまとめましたが、段階の異なるMFIsでは、資金ニーズや資金調達の選択肢が異なるのです。今回は、商業化の各段階におけるMFIsの資金調達方法をまとめてみようと思います。 通常、初期MFIs(NGO-MFIs)は、マイクロクレジットの原資となる資本は補助金等により既に確保されています。(予算がついた上で、プログラムが始められる場合が多いでしょう。)このため、初期のオペレーションにおいては、MFIsは主にバランスシートのアセット側のマネジメント、つまり、ポートフォリオの拡大、経営情報システム(Management Information System: MIS)の導入、キャッシュ・マネジメント等に経営努力が注がれます。やがて、これらの努力によりビジネスが軌道に乗ると、ポートフォリオを拡大するために、バランスシートの右側の構築、すなわち、新たな資金調達方法の開拓が始まります。 表にあるように、受贈資本のみで始めた初期NGOに、新たな資金ニーズがある場合、まずは援助資金を頼みとし、ドナーの新規開拓や既存ドナーからの追加的な補助金により調達をします。次に、収支が均衡し多少の剰余金を生み出せる自立的NGOになると、多少の信用ができるため、今度は同じ援助資金でも、補助金ではなく、ドナーや援助機関から市場金利より低い金利での借入れ(Concessional loan)ができるようになります。金利は払うものの、選択の幅は広がり、自由度が高まります。 しかし、一般的に援助資金というものは、限定的で、中・長期的な資金計画を立てる上では、非常に不安定な財源と言えます。なぜなら、MFIs自身のパフォーマンスとは無関係に、政治的、経済的状況等により、いつ打ち切られるのか、次年度あてにできるのかすら確かではないからです。また、マイクロクレジットが高金利なのはよく知られていますが、追加融資の条件として、それがコストをカバーするのに必要な金利であるかどうかに関わらず、一方的に金利の引き下げを要求されることもあると言います。 さらにビジネスが拡大し、資金ニーズが高まると、今度は市場金利での商業借入(Commercial borrowing)により資金調達を図ります。しかし、この段階で、NGO-MFIsは壁にぶち当たります。いくら実績のある成熟NGOとは言え、貸し手は、特に地場銀行は、なかなかNGOには融資をしないからです。仮にしたとしても、高リスクとみなされるため金利は高く、融資限度額も低い(エクイティに対して、同程度か最大でも2倍程度)ので、急成長するポートフォリオの成長速度を維持するのは困難になります。事実、多くのMFIsにとって最大の成長制約要因は資金調達であることが指摘されています。 例えば、MFのパフォーマンス評価基準の一つであるAccion CAMELでは、MFIsの負債比率は6倍以下であること、つまり自己資本比率が17%以上であることが推奨されています。 しかし、このようなMFIs対象の基準はあっても、前提となっているのは、業態転換を遂げたMFI銀行だけであり、NGO-MFIsなどは、そもそも想定の範囲外ということになります。つまり、MFIssがレバレッジを効かせ、資本市場からより多くの資金を調達するためには、NGOからMFI銀行への転換を遂げることが不可欠であり、それが、預金業務の展開と並んで、MFIsが甚大なコストをかけても商業化していく大きな要因となっています。 このような事情を背景に、見事業態転換を果たしたtransformed MFIsは、資金調達手段として、預金の動員、株式発行、そして債券発行と、その選択肢を広げていくのです。 預金については、しばしば最も低廉な調達手段と思われがちです。しかし、商業借入がオペレーションコスト等の追加的なコストが一切かからず、金利のみを負担すればよい一方で、transformed MFIsが新たに預金サービスを始める際には、貯蓄商品の開発、マーケティング、セールス、新たなMISの導入等のインフラ整備に多大なコストがかかるため、少なくとも短期で見れば、必ずしも最安の調達方法とはいえないわけです。ただし、預金サービスの提供はMFIにとって重要な資金調達源を確保するのと同時に、顧客サービスの向上であり、マイクロクレジットは必要としていないが、安全なお金の保管場所を必要としている多くの貧困層へアウトリーチを広げる可能性がある、という点も忘れてはなりません。 ということで、今日はここまでにしたいと思います。フォーラムまで本当にもう少しですが、明日時間が作れれば、MIVs(Microfinance Investment Vehicles)についても、簡単にまとめたいと思います。 《参照文献》 ・Burand, Debora. 2007. “Chapter6.: The funding structure”, Transforming Microfinance Institutions, p163. ・CGAP/MIXが2004年に行った調査。http://microfinancegateway.org/files/14588_CGAP_MIX_MFI_Demand_for_Funding_Survey_Report.doc ・Saltzman,Sonia. and Darcy Salinger. 1998. “The ACCION CAMEL – Technical Note”, Accion International, USAID – Microenterprise Best Practices (MBP) Project. p137. ※この記事は、旧LIPブログから引き継いだ記事で、書かれている内容は必ずしも最新の状況を反映しておりません  

グローバル金融機関とMF

1.グローバル総合金融サービス企業とマイクロファイナンス 開発途上国における小口融資を目的としたマイクロファイナンスですが、今日では、ゴールドマン・サックス、シティグループ、リーマンブラザーズといった、グローバル総合金融サービス企業も、当事業に参画を始めています。 今回は、2007年5月にモルガン・スタンレーが証券化して販売したBlue Orchard Loans for Development 2007-1(“BOLD2”)について、取上げてみます。   2. モルガン・スタンレー Blue Orchard Loans for Development 2007-1 モルガン・スタンレーは、スイスを基点とするマイクロファイナンス投資ファンドに特化したマネジメント会社、ブルーオーチャードと提携して、2007年5月に、ローン担保証券(Collateralized Loan Obligations、以下、「CLO」。)を開発しました。アゼルバイジャン、ボスニア、カンボジア、コロンビア、ケニア、モンゴリア、ニカラグア、ペルー、セルビアといった、12カ国発展途上国に基点を置く20マイクロファイナンス機関(Micro Finance Institutions 以下、「MFI」。)への無担保貸付債権を集めて債権プールを作り、これを裏付けに発行されるCLOを開発、販売しました。マイクロファイナンスの証券化です。 ヨーロッパ、アメリカの銀行、保険会社、投資信託、ヘッジファンドといった、21投資家から集められた110.2百万ドル(約1,100億円)相当の資金は、MFIを通じて、途上国の70,000もの低所得層の起業家に融資されました。 途上国での融資は、現地通貨によって行われますが、一方、投資家を為替リスクよりヘッジするために、通貨はUSドルや英国ポンドといったCLO発行通貨にスワップされます。 モルガン・スタンレーとブルーオーチャードは、2006年にも同様のローン担保債権(BOLD1)を発行していますが、今回BOLD1との大きな違いは、トランシェを異なるリスクレベルで切り分けることで、一部トランシェについて、スタンダード&プアーズによる格付けを得ることが出来たことです。各トランシェについての情報は下記の通りです。AA格付は、当時のウォールマート等と同様です。 (出所:http://www.morganstanley.com/about/press/articles/4977.html) 2008年3月にリリースされたブルーオーチャード ニュースレターによると、20MFI全てが、同月、四半期利払いを期日通りに行っており、投資家に対しても、既に、過去3回分配を行っています。 また、20MFIは、2007年中、全地域において成長を続けており、全資産は、30.7億USドル(約3,070億円)になります。以下のグラフからもその様子は伺えます。 (出所: http://www.blueorchard.org/jahia/Jahia/site/blueorchard/Products/pid/144)   3. グローバル総合金融サービス企業とマイクロファイナンスの今後 ゴールドマン・サックスは、2008年3月に、今後5年間で1,000億USドル(約10兆円)をマイクロ・ファイナンス顧客、すなわち、途上国におけるエンド融資利用者の教育に投資していくと発表しています。彼らに、ビジネス・プランニング、マーケティング方法等を学習してもらうことにより、彼らのビジネス・スケール、ひいては、マイクロファイナンス事業の拡大を目指しています。 このようなグローバル金融サービス企業の日本におけるマイクロファイナンスに関する取組みなどについても、今後、レポートしていきます。 ※この記事は、旧LIPブログから引き継いだ記事で、書かれている内容は必ずしも最新の状況を反映しておりません

ポートフォリオについて

American Economic Association(全米経済学会)が刊行するAmerican Economic Journal: Applied Economics(全米経済誌:応用経済学)の2015年1月号は、マイクロファイナンス特集で、マイクロファイナンスの貧困削減効果に関する6本の論文を掲載しています。 エスター・デュフロとアビジット・バナジー著の『貧乏人の経済学』やディーン・カーランら著の『善意で貧困はなくせるのか?』で取り上げられている研究も含まれています。このマイクロファイナンス特集をCenter for Global Developmentがブログ『The Final Word on Microcredit?』で簡潔にまとめているので、紹介いたします。 本ブログのタイトル『マイクロファイナンスは貧困削減に効果があるのか?』に対する回答は、『まだまだ最終的な答は出ていない』と言えそうです。 貧困削減の定義を、①お金を借りられるようになったかどうか、②ビジネスをはじめたかどうか、③所得の増加、④消費の増加、⑤社会福祉的な影響、と5通りにし、ランダム化比較実験(※RCT、臨床試験で使われ、治療効果を厳密に計測する手法)によって、マイクロファイナンスが貧困削減に効果があるかどうかを調査しました。その結果が次の表です。 ①お金を借りられるようになったかどうかは、6つ全ての研究において、統計的に有意(=偶然ではなさそう)に正の効果がありました。つまり、発展途上国の人々はお金を借りる権利を享受できるようになった、ということです。一方で、③所得の増加は有意な差が見られず、④消費の増加は増える場合も減る場合も差が見られないこともありました。要するに、大まかにまとめると、マイクロファイナンスは経済的な意味で、効果があったとは言えないようです。 マイクロファイナンス機関を支援するLiving in Peaceとしては、これは嬉しい研究結果ではありません。そして、それは筆者も同様なよう。今回の結果からマイクロファイナンスに価値がないと判断するのは違う、と以下のふたつの観点から主張するのです。 一つ目は、自由の価値です。筆者は、マイクロファイナンスの研究者David Roodmanの言葉『if development is freedom, and freedom means a bigger choice set, then microcredit is successful development. People are choosing to borrow and invest in ways they couldn’t before.(意訳:もし開発が人々の自由を意味し、そして自由がより多くの選択肢を享受することを指すならばマイクロファイナンスは開発として成功している。人々は、以前はできなかったお金を借りる・投資する、という行為ができるようになるのだから)』を引用しつつ述べます。①の「お金を借りられるようになったかどうか」に正の効果がある時点で、マイクロファイナンスは発展途上国において価値があるのではないか。少なくとも、人々はビジネスを始めるなど新しいことに挑戦できるのだから、と。①の効果は、日本で感じられる以上のものなのかもしれません。 二つ目は、マイクロファイナスの効果は地域やケースごとに異なり、不均質であるという点です。次の図『マイクロクレジットの効果は小さくも大きくもなる(筆者意訳)』では、6つの調査について収入と消費がどれだけ変化したかを図示しています。横軸は年間の米ドル(比較できるように購買力平価で換算済み)です。収入の効果を見ると、ボスニアは700ドル増加でモンゴルはゼロ。消費の効果を見ると、ボスニアは700ドル減少でモンゴルは600ドル増加という風に、大きくバラつきがあるのが分かりますつまり、効果があるともないとも言えないのです。加えて、女性だけに特化したマイクロファイナンスローンもあれば、個人向け、グループ向けのローンもある。利子も異なる。そもそも条件や前提が違うのだから、効果が違うのは当然だとも筆者は述べます。 マイクロファイナンスの貧困削減効果は未知数。まだ最終的な答は出ていません。「自由の価値」のように数値化できないものもありますし、調査結果に非常にバラつきがあるからです。そのうえで、筆者は今回、6本の論文が掲載されたことはマイクロファイナンス業界の大きな前進である、と前向きにブログを締めくくります。 最後に、私のこれまでカンボジアに2回、ベトナムに1回訪問経験に基づいた、マイクロファイナンスの効果に関する考えをまとめます。マイクロファイナンスの価値を日本の住宅ローンに例えてみます。住宅ローンの返済が苦しくなる人もいれば、きちんと返済できてより良い生活を送れる人もいます。住宅ローンによって借り手が必ずしも経済的に豊かになることはないかもしれませんが、自分の住みたい家を選択することができて、人生が豊かになります。 マイクロファイナンスの利用者が住む発展途上国の地方において、モダンな工場やオフィスが建設されるには、道路や電気や水道など、最低限のインフラが必要です。短期的にそれが実現できない状況において、彼らが自力で豊かになる得る手段として、マイクロファイナンス以上に普及している支援やサービスはおそらく存在しません。 限られた機会ですが、エネルギッシュに働く現地の借り手の方たちを訪問しました。もしマイクロファイナンスがなかったら、この人達は自分のポテンシャルを持て余して、不完全燃焼の日々を送っていたかもしれません。少なくとも彼らにとっては、マイクロファイナンスによって豊かになる機会が提供され、それをうまく活用しているように見えました。 マイクロファイナンスは万能薬ではないので、貧困削減に効果がある場合とそうでない場合があります。今後さらに研究が蓄積されることで、どのような人には貧困削減効果があり、どのような人に効果がないのか明らかになれば、より貧困削減効果の高い金融サービスや支援のデザインに役立つと期待されます。 文責:菅原崇@takashifc 参考資料https://www.aeaweb.org/articles.php?doi=10.1257/app.7.1http://www.cgdev.org/blog/final-word-microcredit

割引現在価値

ファイナンスの基礎-割引現在価値 ファイナンスの重要なコンセプトに割引現在価値というものがあります。たとえば、次のことを考えてみましょう。 現在あなたの手元にある100万円と1年後の100万円は同じ価値をもっているでしょうか?直感的に同じ価値ではないと感じると思います。現在手もとにある100万円はすぐにそして確実に使えますが、将来の100万円は現在すぐにそして確実に使うことはできません。つまり将来の不確実な100万円よりも現在の確実な100万円のほうが価値は高いはずなのです。 それでは、将来の100万円が現在どれくらいの価値をもっているかをどのように計算したらいいでしょうか?次の事例を通して検討しましょう。 今、1年満期・金利1%の無リスク債券に100万円を投資したと考えましょう。あなたは1年後に101万円をえられるはずです。 次に、リスクのあるエマージングマーケットの1年満期・金利10%の債券に投資したとしましょう。あなたは不確実ではありますが1年後に110万円をえられるはずです。 上の2つの事例から何が分かるでしょうか?リスクの高い債券のほうが見返りとしてのリターンである金利が高いことが分かります。そして、最初の例では市場は現在の100万円と将来の101万円が等価であるような金利を提示しているということがいえます。それはつまり、将来の101万円を1%で割り戻せば100万円になるということであり、この過程を経て算出された100万円のことを将来の101万円の現在割引価値と呼びます。そして、ここで割戻しに利用した1%のことを割引率とかディスカウントファクターと呼んでいます。 同様のことはもちろん不確実なエマージングマーケットへの投資にもいえます。 ここで重要なことは、不確実性の高い投資ほど割引率が高いということです。リスクの高いキャッシュフローほど高い割引率で割り戻さなければいけないということです。ですから、不確実性の高い投資を行った際の将来想定されるキャッシュフローを無リスク金利で割り戻してしまったら、割引現在価値を過大評価してしまうことになり、投資判断を誤らせてしまうことでしょう。投資の際は、不確実性の高さにフィットした割引率を設定することがとても重要なのです。 参考文献 リチャード・ブリリー、スチュワート・マイヤーズ他「コーポレートファイナンス 第8版」日経BP社(2007) ※この記事は、旧LIPブログから引き継いだ記事で、書かれている内容は必ずしも最新の状況を反映しておりません